欽定大清一統志 - 西蔵

原文
(※は大清一統志（乾隆九年版）（水色は欽定大清一統志との異同箇所））
〔〕内はAmiot1789の仏訳に対応しない箇所
[ ]内はKlaproth1826, p249の表記
{ }内はAmiot･Klaproth1822 (Hänish22, p35)の表記
< >内はAmiot1789, p167の表記

訳文
(ピンク色は原文を変更して翻訳した個所)

註

喀
木
/
山

匝納克山^{^{^#1}}

※ 異同なし

[ 74. Dza nak ri ]
{ Dzanak. }
< Tsa-na-ko-chan. >

在索克宗城^{^#2}北一百四十里

※ 異同なし

[ montagne des petits cailloux noirs a 140 li au nord de Sok dzoung. ]

{ Elle est au Nord de la ville de Sok-dsoung, dont elle est eloignee de cent quarante lys. }

< Elle est au nord de So-ko-tsoung, dont elle est eloignee de cent quarante lys. >

匝納克山は、索克宗城（現在の索県亜拉鎮雪巴村）の北140里にある。

#1：「匝納克山」・・・「嘉慶重修一統志」の表記は「帀納克山」。各文献による表記は下記のとおり。

++ / +	文献名	表記
皇輿全覧図1716m (西蔵圖, Fuchs38m)		-
皇輿全覧図1719m (Fuchs43m-12)		-
Du Halde1738m		-
Du Halde1741m-6		-
d'Anville1790m-1		-
d'Anville1790m-41		-
d'Anville1790m-47		-
水道提綱 (巻八、巻二十一)		-
乾隆十三排圖（十排西三）（清廷三大実測全図集2007）		仄納克阿林
Klaproth1826, p249		Dza nak ri: montagne des petits cailloux noirs (編者訳：黒い小石の山)
皇朝一統輿地全圖1832m		-
Klaproth1836m		-
欽定西域同文志 (巻二十)		匝納克里: 西番語匝碎石也山石近黒故名
'Dzam-gling-rgyas-bshad (Wylie62)		-
西藏全圖1862m		-
Dutreuil de Rhins1889m		Mt. Dzanak
Wegener & Himly1893m		-
RGS1894m		-
Dutreuil de Rhins1897, p267		Mts. Dzanak or Dzanak La 5100
欽定大清會典圖 (巻二百十六、巻二百三十六) (1899)		-
Grenard1899m		Dzanag la 5110
Bolshev1900m		Пр. Дзанак-ла
西蔵全図04m		仄納克山
PGM10m		Dsanag-lung-mug-la 5110 （編註：この峠の南に Dsana Be. が表記）
SOI14m		Zanglungmug P. 16760
SOI 17m		Zang-lunmug P. 18760
中國輿図-1/100-帖勉庫珠-17m		仄納克山 (編註：北緯32°50' 東経94°～94°10' に表示)
衛藏攬要17 (第二巻：山川)		（四）縱断山脈　縱断山脈以其南北縱列作多數之平行峽谷有断絶東西地形联絡之勢故名山脈之區域以廣義言之則東起雅龍山迤西至雅魯藏布江間之駢行山脈皆是以狹義言之則有两大著名山脈一為雲嶺山脈一為他念他翁山脈是两大山脈皆自阿達克穆山来在瀾滄江之東者曰怒江山脈即雲嶺山脈）在瀾滄江之西者曰他念他翁山脈雲嶺山脈自阿達克穆山東北迤為格尓吉通匝噶那拉山山勢高大又東北為東布里山此一帯連岡相續蜿蜒不絶其北隔大北沙江即巴顔喀喇山脈也又折而東南為索克布克謨山有七大山出七大山山合流東注大金沙江又東南行為阿穆尼喀擦穆山為僧格巴尓都山形勢均綿長連亘東南行則入前藏喀木界為索噶都山為索拉嶺又東南行為埜野蘇木多山為卓謨噶里哈達山又南折為達拉山係四川與西藏分界處又南行為穆尼恭多山為公蘇穆拉山以上二山並臨由川入藏之大路大壩石板桥等處均有雪峯聳峙又南行過江卡城南為甯靜山山頂平坦長四十餘里中立川藏界碑於其上附近有喜松山（一作喜松工山）勢甚高峻上下約四十里雲嶺山脈自此乃南行入四川界延於金沙江西岸為中國南嶺所託始他念他翁山脈自阿達克穆山東南行為仄納克山又南折入喀木界當瀾滄江發源處勢甚高大最著者曰沙魯拉嶺曰巴喇克丹蘇克山曰拉尓古東査山又東南行為噶瑪拉嶺過類多斉畨境為岡楚穆山為津古拉嶺為歇馬山均高大聳立又東南行至拉貢西南為拉貢山當四川入藏大道其東隔子楚河支幹有裏角塘大山其西隔一水支幹有瓦合大山均險峻峙嶇號稱難行他念他翁山脈又東南行為納蘭嶺為額伊嶺又東南行為多尓集結噶尓山永達木永隆岡里山窮年積雪乃自雲南入藏障塞又東南行入雲南境延於瀾滄江西岸乃南入於緬甸暹羅境此二大山脈當在藏境為最險峭川藏通道至金沙江之巴塘起經瀾滄江傍之察木多至怒江嘉裕桥其間一千八百里即迂廻上下於此二大山脈無有積雪及嵐瘴之属旅行者未嘗不於此嗟行路之難也
Far Eastern Geographical Establishment17m		ZANGLUNGMUG LA 16760
SOI-1/100-No.81-20m		Dzanag P. 16300 / Lungmug P. 16500 か？ (編者推測)
中國新輿図25, 第十八圖, 第二十六圖		仄納克山
胡28, p47-48		（・・・）　此外在昌都縣東者有達蓋喇山山勢危峻上下約四十里接熱丫界又有冲得拉山高峻冲霄上下約六十里接哈甲松林口界（一作哈甲松林口）列木喇山上下約五里（一作列木喇嶺）　在昌都縣東南者有奪布喇山上下約二十里平坦易行鼎各喇山上下約五十里疊嶂重崖　在昌都縣西南者有魚別喇山不甚險峻上下二十五里接察雅巴貢界（按上各喇字均一作拉）　此外在索克宗城東六十里者有沙魯拉嶺在索克宗城東南九十里者有畢拉克喇丹達克山一百四十里者有喇岡木克馬山在索克宗城東北九十里者有秦布麻爾査布馬素穆山一百十九里者有索克山在索克宗城西南一百六十五里者有那克碩忒山在索克宗城北一百四十里者有匝納克山在達爾宗城西北三百里者有弩卜公拉嶺爲喀木卽康與前藏之交界在蘇爾莽城西北三十里者有阿母尼甘薩穆山在薄宗城西北一百五十里者有家馬隆立山二百里者有達牙里山在薄宗城西南一百二十里者有塞喇馬岡里山在薄宗城南七十里者有尼木布春木布立岡里山在桑阿充宗城東南八十三里者有察喇岡里山二百三十里者有噶爾布岡里山在桑阿充宗城東北三百里有噶爾岡里嶺在桑阿充宗城西南二百三十五里者有公喇岡里山在匝坐里岡城東南六十里者有達木永隆山在匝坐里岡城東北一百六十里者有多爾濟雨兒珠母山在滾卓克宗城西北四十五里者有卓摩山在節達木之東噶里宗城東北三十里者有巴特馬郭出山在節達木城東南一百六十里者有巴爾丹嵬柱山　此外則尚有擦瓦山納奪山白奪山黃雲山隠山雲山雪山等
Filchner28m-D		Dsa-nag-lung-mug-la 5110 か？（編者推測）
中國古今地名大辞典31, p684		【唐古剌山】崑崙山脈之中支也。自葱嶺分出。與喀喇崑崙並行。爲後藏、新疆之界線。高度達一萬五千二百七十尺。又迤東入前藏。與青海分界。曰唐古剌山。爲拉薩正北之重蔽。其當木魯烏蘇河之源者。爲巴薩通拉木山。更東曰拜都嶺。其南有山口曰唐噶剌。更東曰當剌嶺。其南有伊克諾木罕渾巴什山口。爲拉薩通青海、西寧之大道。更東曰阿克達木山。迤東當西康西北者曰仄納山。東南爲齊布馬爾山。趨昌都爲剌貢山。與橫斷山脈之他念他翁山脈相接。
SOI36m		Dzanag Lungmug P か？ (編者推測)
青海誌略43		第三節　山脈　　　一．唐古剌山脈　唐古剌山脈爲崑崙之南支、由崑崙正幹出葱嶺、東走爲托古茲達坂、再東爲勒科爾烏蘭達布遜山、跨靑海與西藏界而囷輪東走者爲固爾班布羅齊山、爲巴薩通拉木山、江源出焉、爲拜都嶺（其南有山口曰唐古剌）爲當拉嶺（其南有山口曰伊克諾木罕渾巴什山口爲靑海通西藏之大道）、至格爾吉匝噶那山瀾滄江源出焉、山脈至此遂分兩歧、沿瀾滄江南而東走者爲果瓦拉沙山、爲仄拉克山、拉岡木瑪山、巴喇克拉丹蘇克山、阿克達木山、瓦勒山、我拉山、經中壩蘇魯克嚢謙等族地至岡蘇本山、入西康境爲他念他翁山脈、沿瀾滄江北而東走者爲朝午拉山、加却山、達克木山、子勒麻朵山、薩拉嶺、雜楚庫公山、會額巴爾都山、色吾臣及山、經格吉扎武、迭達布慶、覺拉、蘇爾莽等族地至朔拉嶺、入西康境爲寧靜山脈。 (p11)
青海省素圖43m		ザナグラか？ (編者推測)
AMS-5304-1/150-X11-45m		Dzanag Pass 4968 or Lung-mug Pass 5029 か？ (編者推測)
SOI-1/200-NORTH TIBET-45m		Dzanag P.
AMS-1301-1/100-NI46-50m		DSA-NGA RI (編註：山脈として表記) / Dzanag Lungmug Pass （編者推測）
USAF-1/200-CL305-51m		DZANAG PASS 16300
Times Atlas57m		Dzanag La か？ (編者推測)
中華民國地圖集-IV-62m-C29/30		査那格山口 Dzanag La か？ (編者推測)
玉樹縣志稿68, p56-57 （佐藤78, p152-153の考察）		瀾滄江上流瀾滄江上流有二源北曰雜曲河南曰鄂穆曲河雜曲河發源格吉西北境果瓦那沙拉山麓有南北二源南源曰雜那雲北源曰雜朶雲二水東流至扎西拉賀寺之西相合名雜朶拉松多（番人謂两水之処曰松多）雜朶拉水東南流至阿雜松多阿雲水自西南来入之（阿雲水出中壩當拉嶺之東麓二源並發合流東北注至阿蘇松多蘇旺雲水自西来入之阿雲水又東北流至阿雜松多與雜朶拉相會）是為雜曲河東南流右受可児襄雲加十戎雲二水（・・・）「（・・・）　果瓦那沙拉山の原名は知り得ないが、水源の西方に横たわる格爾吉匝噶那山（新輿図）・Dzagar Mts.（ホルディック）であることは疑いなく、ザナクルンムク峠 Dzanag lung mug pass（ダス。ホルディックではDzang lung mug Pass）のある山でもあろう。この峠の東から発源するのが南源、雑那雲水<Rdsa nag yur で、その北東から発源するのが北源、雜朶雲水<Rdsa dkar yur と考えられる。雜朶雲水は明らかにホルディックのいうDzagar Mts.から出ているから Rdsa dkar と見做すべきである。ただそのように考えると雜朶は貢朶淖尓と同様（146頁(<-編注：佐藤78)）、雑尕の誤りとしなければならぬ。同様に雜朶拉松多も雜尕拉松多の誤りで、 Rdsa dkar sum mdo を写しており、ザカルチュ河が本流であることを示し、大月河に一致するのである。扎西拉賀寺は Bkara çis la kha dgon pa で、前述のタシーゴンパそのものと考えられる。　さてここで道はザナク河に沿ってザナクルンムク峠に至るものと、ザカル河を遡ってザカル山を越え北北西に向うものと二つに分れる。（・・・）」（佐藤78, p152-153より引用）
USSR-1/20-I-46-28-76m USSR-1/50-I-46-Г-78m		пер. Джаналунгму 4881 か？ (編者推測)
JOG-1501-1/25-NI46-11-74m		CHA-NA-LUNG-MU-LA
中国歴史地図（清朝期）96, Fig. 61-62		-
中国-1/100万地形図-I-46-97m		-
玉樹州志2005, p1195		扎那日根：位于莫云郷以12公里处、東南走向、主峰海抜5550米。（編者推測）
青海省軍民両用交通地図冊2011		-
青海省地図冊2012, 31		”瀾滄江源頭” か？（編者推測）（青海省玉樹藏族自治州杂多県）
中村2016, p304-305		扎那日根山（民俗的源頭）あるいは Zanag Lungmug (地理的源頭) 5055m (1894.4 de Rhins)　か？（編者推測）
北村2017, p8, p18-21		扎那日根山（民俗的源頭）あるいはザナ・ルムング峠（ルンモ峠）フランス隊（1894、ド・ラン）源頭か？（編者推測）
編者推測（Topo map表示）		衛-11 /喀木-2
xx / x	文献名	表記

　「匝納克山」については、佐藤78で言及されたAMS-1301-1/100-NI46-50mのメコン源流域に表示された「DSA-NGA RI」あるいは「Dzanag Lungmug Pass」のことだろうか？中村2016, p306-309にはメコン河源頭域の山々の写真が掲載されている。

#2：「索克宗城」・・・「畢拉克喇丹速克山」の項の註2を参照のこと。

区
分

訳文
(ピンク色は原文を変更して翻訳した個所)

註

欽定大清一統志　巻413

編者の解釈

[ Annotation: 74. Dza nak ri - Kam / RI ]
（Appendix 4: Mountains of Tibet which are listed on the "Ta-ch`ing i-t`ung-chih: authorized version (欽定大清一統志)"）

* Set up	2023/2/10
* Updated	2024/7/21