新潮文庫 夏のキャンペーン広告
新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2016)***


新潮文庫の100冊
(2016年)

○配列
  • 恋する本 (21冊)
  • シビレル本 (23冊)
  • 考える本 (15冊)
  • ヤバイ本 (21冊)
  • 泣ける本 (23冊)
****** #各ジャンル内の作品は日本作品、海外作品の順に配列

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家#は10年以上継続して採用されてきた作家

○コメント
 今年のキャンペーンパンフレット(6月下旬に書店で入手)は、昨年と同じく本を読むロボット「キュンタ」のイラストが表紙に描かれています。
 昨年の「キュンタ」は、キャラクター採用初年度の"緊張感"のせいか背中を伸ばし気味でしたが、2年目の今年は窓際に腰を落ち着けリラックスして本を読んでいるように見えます。
 今年のパンフレットも、各ジャンルのリストの前に昨年と同じく(小さな町で小さな本屋を営む)おじいさんと「キュンタ」の小話を描くスタイルを踏襲しています。カラフルな色彩は今年も健在で、パンフレットのp48-49には
(無料パンフレットでここまでやるかと思えるほど・・・)カラフルな虹の絵が描かれています。ちなみにこれらの小話やイラストなどは、「新潮文庫の100冊」の特設サイトでも公開されています(そのかわり、昨年のような「キュンタ」の特設ムービーは今年は公開されていません・・・)
 今年の100冊のオリジナルプレゼントは昨年と同じく特製しおり
(今年は「座るキュンタしおり」ということで、昨年より大きくなっている・・・)で、さらに TwitterやInstagramを駆使すれば抽選で「純金キュンタしおり」が当たるそうです(SNSを使わない私には縁がありませんが・・・)。ちなみに、「新潮文庫の100冊大人買い全点セット」を買うと、「キュンタ」のオリジナルしおりを1箱(今年は240枚入り!)もらえるそうです

 今年(2016年)の「100冊」 (私の数え方では96人の作家の計103冊) のうち、新規採用作家(10人)、復活した作家(13人)、交代した作家(25人)の人数については、前年(2015年はそれぞれ、12人、13人、26人)とほぼ同じ程度です。ちなみに、昨年(2015年)新規採用された12人の作家のうち、今年も継続採用されたのは7人、昨年復活した13人の作家については6人が継続採用と、どちらも昨年
(2014年新規採用:11人/2015年も継続採用:4人、2014年復活:7人/2015年も継続採用:1人)に比べて継続採用の割合が上昇しています。

 今年の採用リストをみてゆくと、北 杜夫 「ぼくのおじさん」が初めて採用されたことに興味を持ちました。これは今年(2016年)の秋に公開される映画の原作ですが、私にとっては映画よりも1974年にNHK少年ドラマシリーズで放映されたTVドラマの印象が強く残っています。NHK少年ドラマシリーズとして放映されたこの作品は録画映像が残っていないそうですが、リアルタイムで見た私の曖昧な記憶では(原作とは全く異なる)ドラマ最終回の最後のシーンは次のようなものでした:

 
主人公の少年の家に居候をしていたおじさんがとうとう結婚することになった。結婚式に臨席したお父さんとお母さんが帰宅して結婚式の様子を家族に話しながらくつろいでいると電話が鳴った。受話器をとると、結婚式の後そのまま新婚旅行に出かけていたはずのおじさんからの電話で、「大事なもの(註:旅行カバンだったような気がするがはっきりしない・・・)を自宅に忘れてしまった!」と大きな駅の公衆電話から叫んでいて、家族一同が呆れたところでドラマが完結する・・・

 これを機会に私が作成した「新潮文庫の採用作品(夏のキャンペーン広告、ベスト100、100冊)の変遷のリスト」から、NHK少年ドラマシリーズの原作となった作品を下にリストアップしてみました。「NHK少年ドラマシリーズ=SF作品」という先入観がありましたが、こうしてリストにしてみると、意外に多くの文学作品がこのドラマシリーズの原作となっていたことがわかります。

 復活した作家としては、野坂昭如「火垂るの墓」が22年ぶりに採用されましたが、これは2015年12月に死去した作者追悼の意味が大きいと思われます。モーム「月と六ペンス」はさらに以前の43年ぶり
(「新潮文庫の100冊」より前の「新潮文庫ベスト100」時代以来)の復活です。モームの復活は新潮社が近年新たに翻訳した世界の名作小説を「Star Classics 名作新訳コレクション」と名付けたレーベルからです。今年はモーム「月と六ペンス」の他にスティーヴンソン「ジキルとハイド」がこのレーベルから新たに復活採用されています。海外作家の作品については、今年は全体に占める採用割合が 17% (=日本人作家の作品数:85/海外作家の作品数:18)となり、2013年を底とする海外文学の採用数の減少傾向からは脱却しつつあります。
 個人的には今年(2016年)4月から6月にかけてNHKで放映されたTVドラマ「トットてれび」の原作となった黒柳徹子「トットチャンネル」今春、新版が新潮文庫から発行)を復活採用してもよかったと思います。
 若者向けのレーベル新潮文庫nexからは2冊(「いなくなれ、群青」、 「ケーキ王子の名推理」)が採用されています。

 今年も6月初旬に新潮文庫のWeb Page「ワタシの一行教育プロジェクト」をみると、下の写真のような「中学生に読んでほしい30冊」「高校生に読んでほしい50冊」のパンフレット(PDFファイル)が公開されていました(2016.7.2現在))(今までこうしたパンフは近所の行きつけの書店で見つけることができましたが、今年の春にこの書店が突然閉店してしまいました・・・)。どちらのパンフレットの表紙にも2015年から新潮文庫の新キャラクターとなった本を読むロボット「キュンタ」が描かれています。
 今年のパンフレットの表紙は、中学生向けが黄緑色、高校生向けが水色となりました(パンフレットの色については、「新潮文庫の100冊」=黄色、というようなメインカラーが決められていないので毎年色が変わっているのでしょう)。
 昨年の採用作品と比較した結果を下にまとめてみました(*は今年新たに採用された作品)
中学生に読んでほしい30冊 高校生に読んでほしい50冊
芥川龍之介 「蜘蛛の糸・杜子春」
石田衣良 「4TEEN」
石原千秋監修・新潮文庫編集部編 「教科書で出会った名詩100」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
小川洋子 「博士の愛した数式」
恩田 陸 「夜のピクニック」
* 角田光代 「さがしもの」
川端康成 「伊豆の踊子」
重松 清 「きよしこ」
* 瀬尾まいこ 「あと少し、もう少し」
太宰 治 「走れメロス」
辻村深月 「ツナグ」
夏目漱石 「坊っちゃん」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
野坂昭如 「アメリカひじき・火垂るの墓」
畠中 恵 「しゃばけ」
星 新一 「ボッコちゃん」
松岡圭祐 「ミッキーマウスの憂鬱」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
三島由紀夫 「潮騒」
村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
湯本香樹実 「夏の庭」
ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
* ケストナー 「飛ぶ教室」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
ドイル 「シャーロック・ホームズの冒険」
トウェイン 「トム・ソーヤの冒険」
ヘミングウェイ 「老人と海」
モンゴメリ 「赤毛のアン」
* ルナール 「にんじん」

交代
有川 浩 「レインツリーの国」
三浦哲郎 「ユタと不思議な仲間たち」
堀 辰雄 「風立ちぬ・美しい村」
ロビンソン 「思い出のマーニー」
 
芥川龍之介 「羅生門・鼻」
安部公房 「砂の女」
* 彩瀬まる 「あのひとは蜘蛛を潰せない」
池谷裕二 「受験脳の作り方」
井伏鱒二 「黒い雨」
* 伊坂幸太郎 「オー!ファーザー」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
* 江國香織 「つめたいよるに」
遠藤周作 「沈黙」
* 大岡昇平 「野火」
小川洋子 「博士の愛した数式」
小澤征爾 「ボクの音楽武者修行」
* 小田雅久仁 「本にだって雄と雌があります」
* 小野不由美 「月の影 影の海」
恩田 陸 「夜のピクニック」
川上弘美 「センセイの鞄」
* 河野 裕 「いなくなれ、群青」
越谷オサム 「陽だまりの彼女」
志賀直哉 「小僧の神様・城の崎にて」
司馬遼太郎 「燃えよ剣 (上・下)」
重松 清 「きみの友だち」
太宰 治 「人間失格」
辻村深月 「ツナグ」
筒井康隆 「旅のラゴス」
中島 敦 「李陵・山月記」
夏目漱石 「三四郎」
中村 計 「甲子園が割れた日」
西川美和 「その日東京駅五時二十五分発」
早野龍五・糸井重里 「知ろうとすること。」
原田マハ 「楽園のカンヴァス」
藤原正彦 「若き数学者のアメリカ」
* 星 新一 「ようこそ地球さん」
宮沢賢治 「注文の多い料理店」
三島由紀夫 「金閣寺」
三浦綾子 「塩狩峠」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」
* 宮本 輝 「錦繍」
* 村上春樹 「1Q84 BOOK1」
* 森見登美彦 「四畳半王国見聞録」
* 山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
吉本ばなな 「キッチン」
米澤穂信 「ボトルネック」
* 綿矢りさ 「ひらいて」
O.ヘンリー 「賢者の贈りもの」
* オースティン 「自負と偏見」
カーソン 「沈黙の春」
カフカ 「変身」
サン=テグジュペリ 「夜間飛行」
* トウェイツ 「ゼロからトースターを作ってみた結果」

交代
朝吹真理子 「きことわ」
有川 浩 「キケン」
伊坂幸太郎 「ゴールデンスランバー」
井上ひさし 「父と暮らせば」
江國香織 「神様のボート」
角田光代 「さがしもの」
佐藤多佳子 「黄色い目の魚」
橋本 紡 「流れ星が消えないうちに」
星 新一 「未来いそっぷ」
宮本 輝 「蛍川・泥の河」
村上春樹 「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上・下)」
森見登美彦 「太陽の塔」
山本美香・日本テレビ編 「山本美香という行き方」
サリンジャー 「フラニーとズーイ」
シン 「フェルマーの最終定理」
(文中敬称略)
(2016.7.2)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024
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