新潮文庫 夏のキャンペーン広告
新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2013)***


新潮文庫の100冊
(2013年)
   

○配列
  • 泣ける本 (20冊)
  • ヤバイ本 (27冊)
  • 恋する本 (23冊)
  • 考える本 (14冊)
  • 痺れる本 (27冊)
****** #各グループは、ランダムに配列

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家#は10年以上継続して採用されてきた作家

○コメント
 今年の100冊のキャンペーンについては、昨年の経験を踏まえて、6月半ば頃からAmazon.co.jp にアクセスして2013年の100冊コーナーが開設されているかチェックしていました。ところが、予想に反して今年は7月に入るまでAmazon.co.jpでは「新潮文庫の100冊2013」の特設コーナーがみつかりませんでした。私が最初に今年のキャンペーンの詳細を知ったのは、6月末に近所の書店で開設されていた「新潮文庫の100冊」キャンペーンコーナーでした。

 今年の100冊のキャンペーンは、1990年代末からキャンペーンキャラクターとして定着してきた「Yonda」やキャンペーン・カラーである黄色から脱却
(Yondaは新潮文庫のキャラクターとして引き続き活躍中)し、有名人(芸能人、スポーツ選手、文化人等)のカラフルなイラストと彼らの心に響いた本の一節とコメントが要所に配置されるデザインへと変身しました。辞書を必要とするような難しいコメントもありますが、考え方の違いを楽しめる面白い企画だと思います。
 「新潮文庫の100冊」のWeb Siteは、トップページがWindows8を連想させるタイル風となり、アクセスする度に表示される作品の配置がシャッフルされるような工夫がなされています
(残念なことに、2006年から2012年まで続いてきた過去の「100冊」キャンペーンを紹介するコンテンツは終了しました)

 近所の書店で入手した今年のパンフレットを見てゆくと、昨年の5区分
(恋したくなる本、興奮する本、泣ける本、面白すぎる本、考える本)は、ほぼ同じコンセプトで今年の5区分(泣ける本、ヤバイ本、恋する本、考える本 、痺れる本)に継承されています。
 今年の「100冊」
(私の数え方では99人の作家の計111冊) のうち、新規採用作家(9人)、復活した作家(13人)、交代した作家(22人)の人数は昨年なみです(昨年はそれぞれ、9人、13人、25人)

 今年のラインナップを見ていくと、昨年は積極的に採用されていた哲学や詩集関係の作品がきれいに交代し、網野善彦半藤一利の日本史に関する作品や梯久美子城山三郎吉村 昭の太平洋戦争に関する(ノンフィクション)小説が採用されているのに気がつきました。
 さらに、近年話題となる「登山ブーム」
(<---有名な山ばかりに人が集中している気もしますが・・・)を反映してなのか、深田久弥沢木耕太郎の山岳関係の作品が採用されています。山に関連する多くの小説を遺した新田次郎は、つい最近ユネスコの世界遺産登録が決まった富士山にちなんだ名作「芙蓉の人」が採用されると思っていたところ、昨年夏に出版された「つぶやき岩の秘密」(この作品は1970年代に放映されたNHK少年ドラマシリーズの原作で、私はリアルタイムとDVDの両方で見ましたが、Web上での評判通りの傑作だと思います・・・)が採用されています(ちなみに、「芙蓉の人」は新潮文庫にはなく、文春文庫から刊行されています)

 採用割合の低下が続く海外作家の作品については、今年は一気に8作品も交代
(新規採用:0、復活:2)したため、今年の「100冊」に占める海外作品の割合は 12% (=日本人作家の作品数:98/海外作家の作品数:13)となり、私の調べた期間(1961-2013)では最も低くなりました。
 今年交代した作品の中には、1990年前後から採用されてきたスティーブンソン 「ジーキル博士とハイド氏」カーゾン「沈黙の春」があるのに気がつきます。海外作家の作品については、最近では新訳の形で復活することが多いので、これらの作品はそのうち復活するのでしょうか?
また、現代の科学に対する問題提起をしている「沈黙の春」「朽ちていった命」が同時に交代したのは単なる偶然だと思いたいです・・・。

 今年の「100冊」で久しぶりに復活した作品のうち、堀 辰雄「風立ちぬ」妹尾河童「少年H」については、今夏公開される日本映画の原作として採用されたのだと考えられます。ほぼ同じ時期に吉田修一「さよなら渓谷」フィッツジェラルド 「華麗なるギャツビー(グレート・ギャツビー)」 も映画公開されますが、こちらは今年の「100冊」に採用されませんでした。(あくまで私個人の想像ですが・・・)これらは「100冊」を構成する映画関連枠の割当数
に入りきらなかったので採用できなかったのでしょうか?新潮文庫のHP内にある映画・テレビ・舞台化作品のコーナーでは「さよなら渓谷」「華麗なるギャツビー(グレート・ギャツビー)」もきちんと紹介されています(個人的には、少なくなった海外作品を少しでも補う意味でも「華麗なるギャツビー(グレート・ギャツビー)」は採用してもよかったと思います)。最後になりますが、51年ぶりに採用された吉川英治については、「復活」というより「新規採用」とみなすべきだと思います。


 今年も下の写真のような「中学生に読んでほしい30冊」と「高校生に読んでほしい50冊」のパンフレットが作られ、4月半ばに立ち寄った神保町の書店のレジ付近に置かれているのをみつけました。昨年と比べると採用作品が多少入れ替えられているので簡単にまとめてみました。(*は今年新たに採用された作品)
中学生に読んでほしい30冊 高校生に読んでほしい50冊
有川 浩 「レインツリーの国」
* 石田衣良 「4TEEN」
小川洋子 「博士の愛した数式」
* 小野不由美 「月の影 影の海」
恩田 陸 「夜のピクニック」
重松 清 「きみの友だち」
* 妹尾河童 「少年H」
太宰 治 「人間失格」
* 辻村深月 「ツナグ」
夏目漱石 「坊っちゃん」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
中沢けい 「楽隊のうさぎ」
畠中 恵 「しゃばけ」
星 新一 「ボッコちゃん」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
三島由紀夫 「金閣寺」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
湯本香樹実 「夏の庭」
吉本ばなな 「キッチン」
米澤穂信 「ボトルネック」
リリー・フランキー 「東京タワー」
* 和田 竜 「忍びの国」
カフカ 「変身」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
ドイル 「シャーロック・ホームズの冒険」
ヘッセ 「車輪の下」
ヘミングウェイ 「老人と海」
* ボーム 「オズの魔法使い」
* モンゴメリ 「赤毛のアン」
交代
伊坂幸太郎 「重力ピエロ」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
江國香織 「すいかの匂い」
新潮社ストーリーセラー編集部・編 「Story Seller」
宮部みゆき 「レベル7」
村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
 
赤川次郎 「ふたり」
芥川龍之介 「羅生門・鼻」
* 安部公房 「砂の女」
有川 浩 「レインツリーの国」
井伏鱒二 「黒い雨」
伊坂幸太郎 「重力ピエロ」
* 伊坂幸太郎 「ゴールデンスランバー」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
* 江國香織 「つめたいよるに」
* 遠藤周作 「沈黙」
小澤征爾 「ボクの音楽武者修行」
小川洋子 「博士の愛した数式」
恩田 陸 「夜のピクニック」
川上弘美 「センセイの鞄」
角田光代 「さがしもの」
神永 学 「タイム・ラッシュ」
*越谷オサム 「陽だまりの彼女」
近藤史恵 「サクリファイス」
* 佐藤多佳子 「黄色い目の魚」
司馬遼太郎 「燃えよ剣 (上・下)」
重松 清 「きみの友だち」
太宰 治 「人間失格」
* 辻村深月 「ツナグ」
夏目漱石 「坊っちゃん」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
中沢けい 「楽隊のうさぎ」
中村 計 「甲子園が割れた日」
畠中 恵 「しゃばけ」
橋本 紡 「流れ星が消えないうちに」
藤原正彦 「若き数学者のアメリカ」
星 新一 「ボッコちゃん」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
三島由紀夫 「金閣寺」
三浦綾子 「塩狩峠」
宮部みゆき 「レベル7」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」
* 宮本 輝 「蛍川・泥の河」
村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
湯本香樹実 「夏の庭」
吉本ばなな 「キッチン」
米澤穂信 「ボトルネック」
リリー・フランキー 「東京タワー」
ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
カフカ 「変身」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
ドイル 「シャーロック・ホームズの冒険」
ヘッセ 「車輪の下」
ヘミングウェイ 「老人と海」

交代
いしいしんじ 「トリツカレ男」
江國香織 「すいかの匂い」
金城一紀 「対話篇」
さくらももこ 「そういうふうにできている」
佐野洋子 「がんばりません」
司馬遼太郎 「人斬り以蔵」
舞城王太郎 「阿修羅ガール」
養老孟司、宮崎駿 「虫眼とアニ眼」
(文中敬称略)
(2013.7.4)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024
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