新潮文庫 夏のキャンペーン広告
新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2017)***


新潮文庫の100冊
(2017年)

○配列
  • 恋する本 (20冊)
  • シビレル本 (24冊)
  • 考える本 (15冊)
  • ヤバイ本 (21冊)
  • 泣ける本 (21冊)
****** #各ジャンル内の作品は日本作品、海外作品の順に配列

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家#は10年以上継続して採用されてきた作家

○コメント
 6月下旬に書店で手に入れた今年のキャンペーンパンフレットには、本を読むロボット「キュンタ」とヒマワリが表紙に描かれていて、(小さな町で小さな本屋を営む)おじいさんからもらったヒマワリの種を育てる「キュンタ」をテーマに小話が展開しています。昨年同様、今年もカラフルな色彩のパンフレットです。「新潮文庫の100冊」の特設サイトには過去の100冊等のパンフレットに収録されたキュンタのストーリーキュンタのフリーイラストページやキュンタのLINEスタンプ等が公開されています。
 今年の100冊のオリジナルプレゼントは昨年と同じく特製しおり
(今年は「二つおりしおり」)です。昨年と同じく TwitterやInstagramを駆使すれば抽選で「純金キュンタしおり」が当たり、「新潮文庫の100冊大人買い全点セット」を買うと、「キュンタ」の二つおりしおりを1箱(全4種各50枚入り)もらえるそうです
 今年(2017年)の「100冊」 (私の数え方では95人の作家の計101冊) ついては、新規採用作家(6人)、復活した作家(9人)、交代した作家(17人)の人数については、前年(2016年はそれぞれ、10人、13人、25人)と比べると少なく、作家の入れ替えが抑制された感じです。
 今年のリストを見てゆくと、夏目漱石が1冊のみの採用で、これは2005年以来
(その前は・・・というと1980年にまでさかのぼります)です。「文豪」と呼ばれるような著名作家については、三島由紀夫を除けば)1作家=1冊の方針にしているようにも思えます。中勘助ケストナーの新規採用は今年の特徴(誰もが知っている作家ではないけど名作を書いている・・・)だと感じます。中勘助「銀の匙」については、灘高の名物教師だった橋本武(1912-2013)が国語の授業のテキストとしていたことが採用理由と思われます。私は、高校時代の読書会でこの本(岩波文庫版)を読みましたが、作者の幼児期(明治時代)の日々の暮らしを子どもの視点で鮮やかに描いたこの本には感銘を受けました。この本は文字ばかりですが、挿絵が入っていたら読者がもっと増えるのでは?と思ってしまいます。また、「銀の匙」は1987年に岩波書店が岩波文庫の創刊60周年を記念して文化人・識者に対して実施したアンケート「岩波文庫 私の三冊」で第1位になったことも記憶しています(ちなみに、岩波書店が岩波文庫創刊90周年を記念して今年も同様のアンケートをまとめた「岩波文庫 私の三冊」(「図書」2017年臨時増刊 (第820号)」)をみると、「銀の匙」を挙げた人はいませんでした・・・)
 復活した作家としては、山崎豊子が17年ぶりに採用されましたが、これは2013年に亡くなった作者への追悼の意味が大きい
(採用された「約束の海」は未完の絶筆)と思われます(1960年代に行われていた新潮文庫の夏の新聞広告では「ぼんち」や「暖簾」が何度も採用されています)
 海外作家の作品については、今年は全体に占める採用割合が 18%
(=日本人作家の作品数:83/海外作家の作品数:18)となり、2013年に12%まで低下した海外文学の採用割合が徐々に上昇する傾向が続いています(ちなみに、新潮文庫と同じく夏のキャンペーンを実施している他の文庫について今年のパンフレットから海外作家の作品の割合を計算してみると、角川文庫は4% (日本人作家の作品数:91/海外作家の作品数:4)、集英社文庫は3%(日本人作家の作品数:94/海外作家の作品数:3)となり、海外作家への目配りの高さは「新潮文庫の100冊」の特徴だといえるでしょう)

 今年も6月中旬に新潮文庫のWeb Page「ワタシの一行教育プロジェクト」をみると、下の写真のような「中学生に読んでほしい30冊」「高校生に読んでほしい50冊」のパンフレット(PDFファイル)が公開されていました(2017.7.2現在))。今年もパンフレットの表紙には「キュンタ」が描かれています。今年のパンフレット表紙の色は、中学生向けが黄緑色、高校生向けがオレンジ色になり、2013年と同じ配色に戻りました。今年の「高校生に読んでほしい50冊」のリストをみて驚いたのは、高野悦子「二十才の原点」が入っていることです。著者が遺したこの本の舞台や背景については、非常に詳しく調べている方のHP(『高野悦子「二十歳の原点」案内』 URL:http://www.takanoetsuko.com/、2017.7.2現在)があります(私もかつて京都市内の図書館でこの本の冒頭に記された小さな新聞記事を新聞縮刷版で閲覧したことがありますが、同じ事を考えていた人が過去に何人もいたせいか、ぶ厚い新聞縮刷版の中のそのページだけが開きやすくなっていたことを覚えています・・・)。
 昨年の採用作品と比較した結果を下にまとめてみました(*は今年新たに採用された作品)
中学生に読んでほしい30冊 高校生に読んでほしい50冊
芥川龍之介 「蜘蛛の糸・杜子春」
石田衣良 「4TEEN」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
小川洋子 「博士の愛した数式」
恩田 陸 「夜のピクニック」
* 角田光代 「キッドナップ・ツアー」
川端康成 「伊豆の踊子」
* 重松 清 「きみの友だち」
瀬尾まいこ 「あと少し、もう少し」
太宰 治 「走れメロス」
辻村深月 「ツナグ」
* 中沢けい 「楽隊のうさぎ」
夏目漱石 「坊っちゃん」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
野坂昭如 「アメリカひじき・火垂るの墓」
畠中 恵 「しゃばけ」
星 新一 「ボッコちゃん」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
三島由紀夫 「潮騒」
村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
* 柚木麻子 「本屋さんのダイアナ」
湯本香樹実 「夏の庭」
ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
ケストナー 「飛ぶ教室」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
トウェイン 「トム・ソーヤの冒険」
ヘミングウェイ 「老人と海」
* ペロー 「眠れる森の美女」
モンゴメリ 「赤毛のアン」
ルナール 「にんじん」

交代
石原千秋監修・新潮文庫編集部編 「教科書で出会った名詩100」
角田光代 「さがしもの」
重松 清 「きよしこ」
松岡圭祐 「ミッキーマウスの憂鬱」
ドイル 「シャーロック・ホームズの冒険」
 
* 芥川龍之介 「地獄変・偸盗」
* 朝井リョウ 「何者」
安部公房 「砂の女」
彩瀬まる 「あのひとは蜘蛛を潰せない」
池谷裕二 「受験脳の作り方」
井伏鱒二 「黒い雨」
* 伊坂幸太郎 「ゴールデンスランバー」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
江國香織 「つめたいよるに」
遠藤周作 「沈黙」
* 王城夕紀 「青の数学」
大岡昇平 「野火」
小川洋子 「博士の愛した数式」
小澤征爾 「ボクの音楽武者修行」
小田雅久仁 「本にだって雄と雌があります」
小野不由美 「月の影 影の海」
恩田 陸 「夜のピクニック」
* 角田光代 「さがしもの」
* 加藤陽子 「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」
川上弘美 「センセイの鞄」
河野 裕 「いなくなれ、群青」
志賀直哉 「小僧の神様・城の崎にて」
司馬遼太郎 「燃えよ剣 (上・下)」
* 重松 清 「ゼツメツ少年」
* 高野悦子 「二十歳の原点」
太宰 治 「人間失格」
辻村深月 「ツナグ」
筒井康隆 「旅のラゴス」
* 中 勘助 「銀の匙」
中島 敦 「李陵・山月記」
夏目漱石 「三四郎」
西川美和 「その日東京駅五時二十五分発」
原田マハ 「楽園のカンヴァス」
* 星 新一 「未来いそっぷ」
* 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
三島由紀夫 「金閣寺」
三浦綾子 「塩狩峠」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」
宮本 輝 「錦繍」
村上春樹 「1Q84 BOOK1」
山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
吉本ばなな 「キッチン」
米澤穂信 「ボトルネック」
綿矢りさ 「ひらいて」
O.ヘンリー 「賢者の贈りもの」
オースティン 「自負と偏見」
カーソン 「沈黙の春」
カフカ 「変身」
* サン=テグジュペリ 「星の王子さま」

交代
芥川龍之介 「羅生門・鼻」
有川 浩 「キケン」
伊坂幸太郎 「オー!ファーザー」
越谷オサム 「陽だまりの彼女」
重松 清 「きみの友だち」
中村 計 「甲子園が割れた日」
早野龍五・糸井重里 「知ろうとすること。」
藤原正彦 「若き数学者のアメリカ」
星 新一 「ようこそ地球さん」
宮沢賢治 「注文の多い料理店」
森見登美彦 「四畳半王国見聞録」
サン=テグジュペリ 「夜間飛行」
トウェイツ 「ゼロからトースターを作ってみた結果」
(文中敬称略)
(2017.7.2)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024
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