新潮文庫 夏のキャンペーン広告
新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2022)***


新潮文庫の100冊
(2022年)

○配列
  • 恋する本 (20冊) (2021年は20冊)
  • シビレル本 (18冊) (2021年は19冊)
  • 考える本 (20冊) (2021年は20冊)
  • ヤバイ本 (19冊) (2021年は19冊)
  • 泣ける本 (18冊) (2021年は21冊)
****** #各ジャンル内の作品はランダムに配列

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家#は10年以上継続して採用されてきた作家

○コメント
 今年(2022年)のパンフレットにもキュンタは描かれていますが、サブタイトルは、2015年のキュンタ登場以来使われてきた「この感情は何だろう。」から「想像力の旅に出よう。」にかわっています。新型コロナウィルスの世界的感染が未だに収束せず、急速な円安の進行やウクライナ戦争等で海外旅行のハードルは依然として高いので、「せめて本を読んで想像の世界の中だけでも旅に出た気になろう」ということでしょうか?さらに言うなら、2010年代の内向きスタイルを今後も続けても私たちの生活水準の低落傾向がいっこうに改まりそうもないので、心機一転して「外の世界」に目を向けてみよう!ということも意味しているのでしょうか?
 今年
(2022年)のパンフレットも、例年通りのカラフルな色で描かれたショートストーリーのスタイルです。今年(2022年)も昨年と同様に夏のモチーフは封印し、おじいさんの代わりにキュンタが本屋の店番をして風変わりな動物の来店客たちと対話をしています。

 今年
(2022年)の「100冊」のオリジナルプレゼントは「ステンドグラスしおり」です。TwitterやInstagramを駆使すれば抽選で「純金キュンタしおり」(昨年とは別デザイン)が当たるのは例年通りです。また、パンフレットに掲載された無署名のコラムは昨年(2021年)とほぼ同じ内容です
 なお、パンフレットには記載されていませんが、今年(2022年)の「100冊」の特設サイトにも過去のキュンタのストーリーやキュンタに関するフリーイラストページやLINEスタンプ等が公開され、今年
(2022年)は新たにショート動画サービス「Tik Tok」のアカウントが開設されています。そのかわりなのか、今年(2022年)の「100冊」のWebサイトには「大人買い」のコーナーが見当たりません(2022年7月13日現在。新潮社のWeb Siteを探してみると、昨年(2021年)の「新潮文庫の100冊全点セット」と「限定プレミアムカバー」は下記のURLにありますが、どちらも品切れです)
  https://www.shincho-shop.jp/store/ProductDetail.aspx?pcd=FE0000100
  https://www.shincho-shop.jp/store/ProductDetail.aspx?pcd=FE0000200

 昨年
(2021年)までの「100冊」Webサイトにあった「大人買い」コーナーは(私の調査では)2006年には始まっている(ただし、2006年は100冊セットのみ)ことを確認しています(「100冊」のセット販売は、さらにさかのぼり1984年から始まっています。かつては、大人になったら子どもの頃よりも自由に使えるおこづかいが増えたことから、「大人買い」という言葉が流行りましたが、近年の物価高騰や実質賃金の低下等で「大人買い」という言葉自体が「死語」になった気がします・・・。

 今年
(2022年)の「100冊」は私のカウント方法では)94人の作家の作品(95冊)が採用されています。昨年(2021年)は96人の作家の作品(99冊)の採用だったので、今年(2022年)は昨年から4冊減ったことになります(100冊以上の作品が採用されていた2000年代の「100冊」のパンフレットには、『「新潮文庫の100冊」は、キャンペーンの総称です。』という註記がありました。(私のカウント方法では)2020年以降の採用冊数が100冊未満になっていますが、これも「キャンペーンの総称」だからOKなのでしょう・・・)
 また、今年
(2022年)の「100冊」に採用された作家の内訳をみてゆくと、新規採用作家(4人)、復活した作家(10人)、交代した作家(17人)となっています(昨年(2021年)はぞれぞれ6人、7人、8人です)。これは2019年の「100冊」(この時はそれぞれ、4人、12人、17人)と同じ方針(新規採用を絞る代わりに、復活、交代の作家を増やす)のように思えます。

 今年
(2022年)の「100冊」のパンフレットをめくってゆくと、今年は海外作家の作品が多くなったことに気がつきます。私のカウント方法で)数えてみると、日本人作家の作品(76冊)(昨年は84冊)に対して海外作家の作品が19冊(昨年は14冊)もあり、全体に占める海外作家の作品の割合が20%になりました。採用作品数にしめる海外作品数の割合の推移はこちらにリスト化してありますが、20%以上になるのは2008年以来のことです。ここにも今年のサブタイトル「想像力の旅に出よう。」が反映されているような気がします。

 以下、今年
(2022年)の「100冊」のパンフレットを読んで気がついたことを列記しておきます。
  1. 重松清の作品が1作だけ採用・・・重松清は、2002年から昨年(2021年)まで毎年新しい作品が採用されていました。採用作品が1作だけというのも2003年以来のことです。
  2. 映像・舞台化された作品・・・新潮社のWeb Site(下記URL参照)には映画・テレビ・舞台化された作品が紹介されています。
      https://www.shinchosha.co.jp/movie/
     上記Web Siteをみると、
     の3作は、映像・舞台化と連動して「100冊」に採用されたのだと思われます。
    新潮社の上記Web Siteには、(近年採用されていない)下記の作品についても紹介があり、個人的にはこれらも今年の「100冊」に採用してもよかったのでは?と思います。)
  3. 今年(2022年)の「100冊」で新たに採用された作家・・・加藤シゲアキはジャニーズグループ(NEWS)での芸能活動の傍ら執筆を続けているそうです。西條奈加中島京子(愛読者の方々には申し訳ありませんが・・・)私にはそれぞれ西加奈子中野京子と混同していました。
  4. 今年(2022年)の「100冊」で復活した作家・・・向田邦子を除けば、いずれも最近10年以内に採用された作家が復活しています向田邦子は「思い出トランプ」で復活しましたが、これは2022年秋に舞台化予定の「阿修羅のごとく」(URL:https://otonakeikaku.net/2022_asyura/ )にあわせたものでしょうか?)
     今年
    (2022年)復活した作品(10作品)のうち、4作品が2019年以来であることから、今年の採用には2019年の担当者が関わっているのでは?とも想像されます岡潔・小林秀雄ゲーテを復活させているくらいなので、現在はWebマガジン化されている「考える人」(URL:https://kangaeruhito.jp/ )に関係する方でしょうか?)。また、10作品中7作品が海外作品だったことも特筆すべきでしょう。
     さらに、今年
    (2022年)は、2015年以来7年ぶりに森鴎外(1862-1922)の作品が採用されましたが、今年(2022年)は鴎外の没後100年(+生誕160年)なので予想はしていました(森鴎外記念館(URL:https://moriogai-kinenkan.jp/ )でも記念イベントが開催されています)。私は、海堂尊「森鴎外」(ちくまプリマー新書, 2022年)を最近読みましたが、この本は(軍医や作家等多面的な活躍をしたため全体像をとらえにくい)鴎外の生涯を年代順に簡潔にまとめ、鴎外を知る際の”地図”になる良書だと思います。海堂尊のこの本を読むと、鴎外と「脚気」をめぐる問題(この問題については、筑摩書房のPR誌「ちくま」の巻頭随筆を執筆していた(作家・精神医の)なだいなだ(1929-2013)が何度も否定的に言及していたことを思い出します・・・)の経緯が記されていて、鴎外一人に責任が限定できないほど大きな「構造的問題」があったことを理解しました。

 今年(2022年)も5月中旬には新潮文庫のWeb Page「ワタシの一行教育プロジェクト」のWebサイトに下の写真のような「中学生に読んでほしい30冊」「高校生に読んでほしい50冊」のパンフレット(PDFファイル)が公開されています。今年もパンフレットの表紙には「キュンタ」が描かれ、表紙の色は中学生向けが水色、高校生向けがオレンジ色です。
 昨年(2021年)の採用作品の採用作品と比較した結果は下記の通りです
(*は今年新たに採用された作品)
中学生に読んでほしい30冊 高校生に読んでほしい50冊
芥川龍之介 「蜘蛛の糸・杜子春」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
* 江國香織「号泣する準備はできていた」
小川洋子 「博士の愛した数式」
恩田 陸 「夜のピクニック」
角田光代 「さがしもの」
重松 清 「きみの友だち」
瀬尾まいこ 「あと少し、もう少し」
太宰 治 「走れメロス」
* 知念実希人 「天久鷹央の推理カルテ」
辻村深月 「ツナグ」
中沢けい 「楽隊のうさぎ」
夏目漱石 「坊っちゃん」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
野坂昭如 「アメリカひじき・火垂るの墓」
* 百田尚樹 「夏の騎士」
* ブレイディみかこ 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」
* 星 新一 「ボッコちゃん」
* 町田そのこ「コンビニ兄弟」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
宮沢賢治 「注文の多い料理店」
三島由紀夫 「潮騒」
村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
* 柚木麻子 「本屋さんのダイアナ」
湯本香樹実 「夏の庭」
* 米澤穂信 「ボトルネック」
ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
ヘッセ「車輪の下」
モンゴメリ 「赤毛のアン」

交代
赤川次郎他「吾輩も猫である」
浅原ナオト「今夜、もし僕が死ななければ」
川上和人「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」
川端康成 「伊豆の踊子」
白石あづさ「世界のへんな肉」
星 新一 「悪魔のいる天国」
ウェブスター 「あしながおじさん」
カミュ「ペスト」
芥川龍之介 「羅生門・鼻」
朝井リョウ 「何者」
* 浅原ナオト 「今夜、もし僕が死ななければ」
池谷裕二 「受験脳の作り方」
井伏鱒二 「黒い雨」
* 上橋菜穂子 「精霊の守り人」
* 江國香織 「きらきらひかる」
遠藤周作 「沈黙」
王城夕紀 「青の数学」
* 小川洋子 「博士の愛した数式」
* 國分功一郎「暇と退屈の倫理学」
小野不由美 「月の影 影の海」
恩田 陸 「夜のピクニック」
角田光代 「くまちゃん」
加藤陽子 「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」
* 河野 裕 「さよならの言い方なんて知らない。」
佐藤多佳子「明るい夜に出かけて」
志賀直哉 「小僧の神様・城の崎にて」
* 重松 清 「せんせい。」
* 白河三兎 「冬の朝、そっと担任を突き落とす」
* 住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』
* 高野秀行 「謎のアジア納豆」
太宰 治 「人間失格」
辻村深月 「ツナグ」
中島 敦 「李陵・山月記」
* 夏目漱石 「三四郎」
原田マハ 「楽園のカンヴァス」
* 藤井青銅 「『日本の伝統』の正体」
* ブレイディみかこ 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」
星 新一 「ボッコちゃん」
* 町田そのこ「コンビニ兄弟」
* 松岡圭祐 「ミッキーマウスの憂鬱」
* 三川みり 「龍ノ国幻想1 神欺く皇子」
三島由紀夫 「金閣寺」
三浦綾子 「塩狩峠」
三浦しをん 「きみはポラリス」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
* 村上春樹 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」
森見登美彦「四畳半王国見聞録」
山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
吉本ばなな「キッチン」
* 米澤穂信 「ボトルネック」
* カーソン 「センス・オブ・ワンダー」
カミュ「ペスト」
カフカ 「変身」
* ゲーテ 「若きウェルテルの悩み」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
ジェイコブズ 「ある奴隷少女に起こった出来事」
ヘッセ「車輪の下」
* ヘミングウェイ 「老人と海」

交代
江國香織 「つめたいよるに」
江戸川乱歩「江戸川乱歩傑作選」
大岡昇平 「野火」
河合隼雄「こころの処方箋」
川上和人「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」
川上弘美 「センセイの鞄」
重松 清 「きみの町で」
司馬遼太郎 「燃えよ剣」
白石あづさ「世界のへんな肉」
須川邦彦「無人島に生きる十六人」
竹宮ゆゆこ「砕け散るところを見せてあげる」
武田綾乃「君と漕ぐ」
夏目漱石 「文鳥・夢十夜」
二宮敦人「最後の秘境 東京藝大」
湊かなえ「母性」
宮本 輝 「錦繍」
綿矢りさ 「ひらいて」
カーソン 「沈黙の春」
ケストナー 「飛ぶ教室」
サガン「悲しみよこんにちは」
シン「フェルマーの最終定理」
(文中敬称略)
(2022.7.13)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024
*
←冒頭ページに戻る
↑トップページに戻る