新潮文庫 夏のキャンペーン広告
新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2014)***


新潮文庫の100冊
(2014年)

○配列
  • 泣ける本 (24冊)
  • ヤバイ本 (24冊)
  • 恋する本 (24冊)
  • 考える本 (15冊)
  • シビレル本 (24冊)
****** #各グループは、ランダムに配列

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家#は10年以上継続して採用されてきた作家

○コメント
 今年の100冊のキャンペーンは、長年続いたキャラクター(Yonda)と基本カラー(黄色)から脱却して「白系オトナ路線」となった昨年のポリシーを継承・発展させるのかと思っていました。
 しかし、6月下旬に近所の書店で入手した今年のパンフレット表紙が黄色に回帰していたのには少し驚きました
(・・・というのは、今まで緑や赤を基本カラーとしていた「角川文庫の夏のキャンペーン」が、今年は黄色を基調としているからです。各社文庫の夏の特設コーナーを展開する書店は、おそらく配置を工夫することでしょう。なお、今年の「100冊」の表紙は黄色ですがパンフ内は昨年同様カラフルに印刷されています)
 Yonda(Yonda Clubも2014年1月に終了)に代わる新たなキャラクターとして、今年はポップなデザインのアメリカ風モンスターを多数登場させています。ただ、各キャラには名前がない
(名前の公募もなさそう・・・)ので、来年以降も登場するかは微妙な感じもします。

 今年(2014年)の「100冊」 (私の数え方では97人の作家の計111冊) のうち、新規採用作家(11人)、復活した作家(7人)、交代した作家(18人)の人数については、昨年と同じく(昨年はそれぞれ、9人、13人、22人)
新規採用作家数 + 復活した作家数 = 交代した作家数 という公式(?)が成立しています。
 作品の区分は、昨年の5区分が踏襲され(昨年の「痺れる本」を、今年は「シビレル本」に変えたのは「痺」の字に難があったためか?)
(「考える本」以外の)各グループの本が同数となるように調整されています。

 今年のパンフレットは、公開映画・話題作の紹介ページや新潮文庫クイズ、「中高生のためのワタシの一行大賞」の結果発表等が盛り込まれていて中高生向け路線に回帰したかのようにも思えます。
 また、抽選方式によるプレゼント
久しぶり(1997年以来)に復活しています(単なる偶然ですが、1997年には今年(2014年)と同じく4月に消費税率がアップしました・・・)。現在放映中のNHK連続テレビ小説「花子とアン」にちなんだカナダへの旅行プレゼントはユニークな企画だと思います。2008年から始まった「限定カバー」本の販売も夏のキャンペーンのアイテムの1つとして定着した感があります。

 採用作品については、昨年と同様、歴史関係の作品(2000年前後に採用が多かった「時代小説」ではなく、特に太平洋戦争関係の実録)が増えてきた印象を受けます。太平洋戦争関係の実録といえば、光人社NF文庫文春文庫に多くの作品が収録されていますが、新潮社でも(文庫化されてはいませんが・・・)松下竜一「私兵特攻: 宇垣纒長官と最後の隊員たち」(1985年)のような名作があります。「私兵特攻」は、著者の松下竜一 (1937-2004) が遺した「豆腐屋の四季」、「暗闇の思想を」、「狼煙を見よ」等の多くのノンフィクション作品の中では異色の作品で、(今年の100冊にも採用された城山三郎「指揮官たちの特攻」にも記述のある)宇垣中将や中津留大尉等が玉音放送後に行った特攻について詳しく調べられています。

 また、山岳関係の作品については、昨年採用された深田久弥沢木耕太郎は交代し、新田次郎の山岳小説だけが採用されています
。新たな国民の休日として「山の日」が制定されたばかりなので、それにちなんでもう少し採用数を増やしてもよかったと思います(ただ、山岳書を扱う書店・古書店の方から「最近では山に登る人は増えても、山の本は読まれないよ・・・」という声も聞かれるので、これは仕方のないことかもしれません・・・)

 海外作家の作品については、今年は採用割合が 14% (=日本人作家の作品数:95/海外作家の作品数:16)となり、昨年よりわずかに持ち直しました。今年はサリンジャー「フラニーとズーイー」が村上春樹の新訳で復活しています。

 今年交代した作家のうち、10年以上継続採用されてきたのは吉本ばななだけでした。復活した作家は、いずれも交代から5年以内の復活でした。

 今年も下の写真のような「中学生に読んでほしい30冊」と「高校生に読んでほしい50冊」のパンフレットが一部書店に置かれているのをみつけました(このパンフレットは、新潮文庫のWeb Page「ワタシの一行教育プロジェクト」でもPDFファイルとして公開されています(2014.7.1現在))。パンフの表紙はどちらも昨年までのキャラクター(Yonda)から漫画風のイラストとなり、中学生向けの色合いと高校生向けの色合いが昨年とは逆転して中学生向けの表紙がオレンジ色に変わりました。採用作品について昨年と比較した結果を下にまとめてみました(*は今年新たに採用された作品)。
中学生に読んでほしい30冊 高校生に読んでほしい50冊
* 芥川龍之介 「蜘蛛の糸・杜子春」
有川 浩 「レインツリーの国」
石田衣良 「4TEEN」
小川洋子 「博士の愛した数式」
恩田 陸 「夜のピクニック」
* 川端康成 「伊豆の踊子」
* 重松 清 「きよしこ」
* 太宰 治 「走れメロス」
辻村深月 「ツナグ」
夏目漱石 「坊っちゃん」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
中沢けい 「楽隊のうさぎ」
* 野坂昭如 「アメリカひじき・火垂るの墓」
畠中 恵 「しゃばけ」
星 新一 「ボッコちゃん」
* 松岡圭祐 「ミッキーマウスの憂鬱」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
* 三島由紀夫 「潮騒」
* 三浦哲郎 「ユタと不思議な仲間たち」
* 村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
湯本香樹実 「夏の庭」
* アンデルセン 「絵のない絵本」
* ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
ドイル 「シャーロック・ホームズの冒険」
* トウェイン 「トム・ソーヤの冒険」
ヘミングウェイ 「老人と海」
ボーム 「オズの魔法使い」
モンゴメリ 「赤毛のアン」
交代
小野不由美 「月の影 影の海」
重松 清 「きみの友だち」
妹尾河童 「少年H」
太宰 治 「人間失格」
三島由紀夫 「金閣寺」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
吉本ばなな 「キッチン」
米澤穂信 「ボトルネック」
リリー・フランキー 「東京タワー」
和田 竜 「忍びの国」
カフカ 「変身」
ヘッセ 「車輪の下」
 
赤川次郎 「ふたり」
芥川龍之介 「羅生門・鼻」
* 朝吹真理子 「きことわ」
安部公房 「砂の女」
* 有川 浩 「キケン」
* 池谷裕二 「受験脳の作り方」
井伏鱒二 「黒い雨」
伊坂幸太郎 「ゴールデンスランバー」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
* 江國香織 「神様のボート」
遠藤周作 「沈黙」
小澤征爾 「ボクの音楽武者修行」
小川洋子 「博士の愛した数式」
恩田 陸 「夜のピクニック」
川上弘美 「センセイの鞄」
角田光代 「さがしもの」
越谷オサム 「陽だまりの彼女」
佐藤多佳子 「黄色い目の魚」
* 志賀直哉 「小僧の神様・城の崎にて」
司馬遼太郎 「燃えよ剣 (上・下)」
重松 清 「きみの友だち」
太宰 治 「人間失格」
辻村深月 「ツナグ」
* 中島 敦 「李陵・山月記」
* 夏目漱石 「三四郎」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
中村 計 「甲子園が割れた日」
橋本 紡 「流れ星が消えないうちに」
藤原正彦 「若き数学者のアメリカ」
* 星 新一 「未来いそっぷ」
* 宮沢賢治 「注文の多い料理店」
三島由紀夫 「金閣寺」
三浦綾子 「塩狩峠」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」
宮本 輝 「蛍川・泥の河」
* 村上春樹 「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上・下)」
* 森見登美彦 「太陽の塔」
山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
湯本香樹実 「夏の庭」
吉本ばなな 「キッチン」
米澤穂信 「ボトルネック」
リリー・フランキー 「東京タワー」
* カーソン 「沈黙の春」
カフカ 「変身」
* カポーティ 「ティファニーで朝食を」
* サン=テグジュペリ 「夜間飛行」
* シュリンク 「朗読者」
* シン 「フェルマーの最終定理」
ヘッセ 「車輪の下」
交代
有川 浩 「レインツリーの国」
伊坂幸太郎 「重力ピエロ」
江國香織 「つめたいよるに」
神永 学 「タイム・ラッシュ」
近藤史恵 「サクリファイス」
夏目漱石 「坊っちゃん」
中沢けい 「楽隊のうさぎ」
畠中 恵 「しゃばけ」
星 新一 「ボッコちゃん」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
宮部みゆき 「レベル7」
村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
ドイル 「シャーロック・ホームズの冒険」
ヘミングウェイ 「老人と海」
(文中敬称略)
(2014.7.5)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024
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