新潮文庫 夏のキャンペーン広告
新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2018)***


新潮文庫の100冊
(2018年)

○配列
  • 恋する本 (19冊)
  • シビレル本 (27冊)
  • 考える本 (15冊)
  • ヤバイ本 (21冊)
  • 泣ける本 (23冊)
****** #各ジャンル内の作品はランダムに配列

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家

○コメント
 6月下旬に書店で手に入れた今年のキャンペーンパンフレットには、浜辺で本を読むロボット「キュンタ」のショートストーリーが昨年同様カラフルに描かれています。ロボットの「キュンタ」が海でも不具合なく活動しているので、「キュンタ」の防塵・防水機能は見かけとは違い高そうです(本を読み涙を流しても大丈夫な「生活防水」クラスよりも高性能( 「キュンタ」と多少形が似ている SONYのデジカメ DSC-RX0 レベルか?) なのでしょう・・・)「新潮文庫の100冊」の特設サイトには昨年と同じく過去の100冊キャンペーン等のパンフレットに収録されたキュンタのストーリーキュンタのフリーイラストページやキュンタのLINEスタンプ等が公開されています。

 今年の100冊のオリジナルプレゼントは昨年と同じく特製しおり
(今年も「二つおりしおり」(昨年とは別デザイン))です。昨年同様 TwitterやInstagramを駆使すれば「純金キュンタしおり」(昨年とは別デザイン)が抽選でもらえるそうです。「新潮文庫の100冊大人買い全点セット(110冊)」を「100冊」のWeb Siteから買うと、「キュンタ」の二つおりしおりを1箱(全4種各50枚入り)もらえる上に、今年は「本革製プレミアム文庫カバー」と「キュンタ缶バッジ」ももらえるそうです。2008年から実施されている「限定プレミアムカバー」については、全8冊のセットを「100冊」のWeb Siteから買うと、今年はしおりとオリジナルトートを付けてくれるそうです。今年はさらにDMM.com配信のシミュレーションゲーム「文豪とアルケミスト」とのコラボ企画として、太宰治「斜陽」山本有三「心に太陽を持て」の限定プレミアムカバーも発行されるそうです(パンフレットには記されていますがが、「新潮文庫の100冊」特設サイトには記載がありません。2018.7.1現在)。また、今年はローティーン向けファッション雑誌「Nicola」とのコラボ企画で中学生向けの手書きPOPコンクールも行われるそうです。こうしてみると、今年の「100冊」は若い人向けの企画に力を入れているように思えます。

 今年(2018年)の「100冊」
(私の数え方では101人の作家の計105冊) のリストをみてゆくと、新規採用作家(12人)、復活した作家(6人)、交代した作家(12人)の人数については、前年(2017年はそれぞれ、6人、9人、17人)と比べると新規採用作家が多く、しかも新規 12人のうち 6人は1970年代、80年代生まれで若手の採用が目立ちます。今年交代した作家には小林秀雄河合隼雄の名前があり、今年は彼らに代わって伊丹十三齋藤 孝色川武大が入っていることから教養対象の「世代交代」が感じられます小林秀雄河合隼雄がここ数年「100冊」に採用されることが多かったのは、2017年春に休刊した(Webでは現在も継続)季刊「考える人」の影響があったのかもしれません・・・)。 
 山本有三の26年ぶり
(1992年以来)復活は、吉野源三郎「君たちはどう生きるか」(2018年現在)話題となっているからだと思われます山本有三と吉野源三郎「君たちはどう生きるか」の関係については、(一財) 大阪国際児童文学振興財団のWeb Site(URL:http://www.iiclo.or.jp/100books/1868/htm/frame081.htm、執筆:竹内長武、2018.7.1閲覧)を参考にしました)。私の憶測ですが、山本有三が採用されたことで、今年が(1年おきでの)採用周期にあたる武者小路実篤「友情」が見送られたような気がします。
 谷崎潤一郎「卍」が51年ぶり
(1967年以来)に採用されたのは、最近の若者用語「卍」の影響でしょうか?

 海外作家の作品については、今年は全体に占める採用割合が 16%
(=日本人作家の作品数:88/海外作家の作品数:17)となり、昨年(18%)よりわずかに低下しました。今年は、「青い鳥」で知られている割に原作が読まれることの少ないメーテルリンクの採用は意外に感じます(メーテルリンクというと、柳田國男「遠野物語(初版)」の22話に「マーテルリンクの「侵入者」を想ひ起さしむ」と脚註があったのを思い出します・・・)。個人的にはサローヤン「僕の名はアラム」(柴田元幸による読みやすい訳が2016年に刊行されましたが、書名が従来の「わが名はアラム」ではないので書店やWeb検索でみつけにくい・・・)を入れて欲しい気がしました。

 今年の「100冊」に入ると私が期待していた本としては、最近、本屋で偶然見つけて読んだ
(2018年に新潮文庫になったばかりの)河江肖剰「ピラミッド -最新科学で古代遺跡の謎を解く-」があります。ピラミッドというと、子どもの頃に図書館で読んだ「世界の七不思議」を取り上げた本や吉村作治らの提唱したピラミッド=「公共事業」説くらいの知識しかありませんでした。この本は、1980年代以降にギザの大ピラミッド周辺地域で始められた測量や発掘調査などによってわかってきた大ピラミッドの建設方法や建設に携わった当時の人々の生活について、写真や図版をたくさん収録して大人も子供も興味がわくようにわかりやすく解説している夏休みの「100冊」にふさわしい内容の本だと思いました(ちなみに、河江氏は吉村氏とは違いピラミッドは「墓」と考えています・・・)


 
 1998年にこのWeb Pageで「新潮文庫の100冊」の変遷の紹介を始めてから早いもので20年が経ちました。
 1998年の当時は、キャンペーンキャラクター(芸能人)の写真と、コピーライターがつくったキャッチフレーズを組み合わせた表紙だったそれまでの「100冊」路線からパンダのキャラクター「Yonda」に転換して間もない頃でした。
 2000年には採用冊数を100冊から150冊に拡大
(この時期は他社のキャンペーンでも採用冊数を拡大していた・・・)しましたが、数年もしないうちに元の100冊前後に戻りました。
 2007年頃からは対象年齢層が拡散傾向にある「100冊」とは分離させる形で中高生向けの「50冊」が発行され
(それまでは表紙やパンフレットの内容が多少異なる100冊の早期版パンフレット(←仮称)が刊行されていたようだ・・・)2011年からはさらに分化して中学生向けの「30冊」、高校生向けの「50冊」が発行されるようになっています。
 2013年にはキャンペーン・キャラクターを長年勤めた「Yonda」が交代して、「ワタシの一行」という「白系オトナ路線」になりましたが、2015年からは新たなキャンペーン・キャラクターである
(現在の)「キュンタ」が登場して「カワイイ黄色路線(?)」に戻りました。2013年以降のパンフレットは、絵本のようにカラフルな色合いとなっています(書店の激減の影響でパンフレットの印刷数を減らすかわりに一冊にかける単価を増したのでしょうか?)

 過去の「新潮文庫の100冊」については、私以外にも何人かの方がWeb SiteやBlogで紹介していました
(2006-2012年には新潮社の「100冊」のWeb Pageでは過去の100冊のパンフレット表紙やポスターが公開されていました)が、(自分の経験からの推測ですが・・・)毎年の更新に要する労力に見合わないほどアクセス数が少ないせいなのか、2010年代半ば以降データを更新しているWeb SiteやBlogをほとんど見かけなくなりました(最近では「100冊」キャンペーンの時期になったら、SNS上で関連情報を消費して済ませるだけになったのかもしれません・・・)

 *追記
   今年が平成30年にちなんで、講談社文庫が「平成の100冊フェア」を実施(2018年4月〜5月)していました。かわいいイラストと平成各年の主な出来事を記したWeb Siteは、時間感覚が希薄になった平成の30年間を簡単に振り返ることができるよい企画だと思います
(2018.7.1 閲覧)


 今年も6月中旬に新潮文庫のWeb Page「ワタシの一行教育プロジェクト」をみると、下の写真のような「中学生に読んでほしい30冊」「高校生に読んでほしい50冊」のパンフレット(PDFファイル)が公開されていました(2018.7.2現在))。今年もパンフレットの表紙には「キュンタ」が描かれています。今年のパンフレット表紙の色は、中学生向けがオレンジ色、高校生向けが青色になり、2014年と同じ配色になりました(昨年の配色2013年と同じだったので、4年周期の配色としているのでしょうか?)。
 今年の「30冊」と「50冊」については、前年との入れ替えが例年に比べて少ないような気がします。
 昨年の採用作品と比較した結果を下にまとめてみました(*は今年新たに採用された作品)
中学生に読んでほしい30冊 高校生に読んでほしい50冊
芥川龍之介 「蜘蛛の糸・杜子春」
石田衣良 「4TEEN」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
小川洋子 「博士の愛した数式」
恩田 陸 「夜のピクニック」
角田光代 「キッドナップ・ツアー」
川端康成 「伊豆の踊子」
重松 清 「きみの友だち」
瀬尾まいこ 「あと少し、もう少し」
太宰 治 「走れメロス」
辻村深月 「ツナグ」
中沢けい 「楽隊のうさぎ」
夏目漱石 「坊っちゃん」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
野坂昭如 「アメリカひじき・火垂るの墓」
畠中 恵 「しゃばけ」
星 新一 「ボッコちゃん」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
三島由紀夫 「潮騒」
村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
柚木麻子 「本屋さんのダイアナ」
湯本香樹実 「夏の庭」
* ウェブスター 「あしながおじさん」
ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
ケストナー 「飛ぶ教室」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
* バリー 「ピーター・パンとウェンディ」
ヘミングウェイ 「老人と海」
モンゴメリ 「赤毛のアン」
ルナール 「にんじん」

交代
トウェイン 「トム・ソーヤの冒険」
ペロー 「眠れる森の美女」
 
芥川龍之介 「地獄変・偸盗」
朝井リョウ 「何者」
安部公房 「砂の女」
彩瀬まる 「あのひとは蜘蛛を潰せない」
池谷裕二 「受験脳の作り方」
井伏鱒二 「黒い雨」
伊坂幸太郎 「ゴールデンスランバー」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
江國香織 「つめたいよるに」
遠藤周作 「沈黙」
大岡昇平 「野火」
王城夕紀 「青の数学」
小川洋子 「博士の愛した数式」
小野不由美 「月の影 影の海」
恩田 陸 「夜のピクニック」
角田光代 「さがしもの」
加藤陽子 「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」
川上弘美 「センセイの鞄」
河野 裕 「いなくなれ、群青」
志賀直哉 「小僧の神様・城の崎にて」
司馬遼太郎 「燃えよ剣 (上・下)」
* 重松 清 「卒業」
* 須賀しのぶ 「夏の祈りは」
太宰 治 「人間失格」
辻村深月 「ツナグ」
筒井康隆 「旅のラゴス」
中 勘助 「銀の匙」
中島 敦 「李陵・山月記」
夏目漱石 「三四郎」
西川美和 「その日東京駅五時二十五分発」
* 羽生善治、伊藤毅志、松原 仁 「先を読む頭脳」
原田マハ 「楽園のカンヴァス」
星 新一 「未来いそっぷ」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
三島由紀夫 「金閣寺」
三浦綾子 「塩狩峠」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」
宮本 輝 「錦繍」
* 村上春樹 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」
山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
吉本ばなな 「キッチン」
* 米澤穂信 「儚い羊たちの祝宴」
綿矢りさ 「ひらいて」
O.ヘンリー 「賢者の贈りもの」
オースティン 「自負と偏見」
カーソン 「沈黙の春」
カフカ 「変身」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
* ジェイコブズ 「ある奴隷少女に起こった出来事」

交代
小澤征爾 「ボクの音楽武者修行」
小田雅久仁 「本にだって雄と雌があります」
重松 清 「ゼツメツ少年」
高野悦子 「二十歳の原点」
村上春樹 「1Q84 BOOK1」
米澤穂信 「ボトルネック」
(文中敬称略)
(2018.7.2)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024
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