新潮文庫 夏のキャンペーン広告
新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2015)***


新潮文庫の100冊
(2015年)

○配列
  • 恋する本 (24冊)
  • シビレル本 (24冊)
  • 考える本 (15冊)
  • ヤバイ本 (21冊)
  • 泣ける本 (23冊)
****** #各ジャンル内の作品はランダムに配列

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家#は10年以上継続して採用されてきた作家

○コメント
 今年のキャンペーンパンフレット(6月下旬に近所の書店で入手)のカラーは昨年と同じく黄色ですが、今年は白い縁取りがあり(今年も角川文庫のキャンペーンパンフレットが同じ黄色なので、縁取りは識別用なのでしょうか?)、表紙には昨年とは違う新たなキャラクター(パンフレットの後半で「キュンタ」と命名されるロボット)が描かれています。

 今年のパンフレットは、2013年からはじまった”「ワタシの一行」路線”を継承していますが、パンフレットには例年の100冊キャンペーンで恒例のオリジナルプレゼントについて記載がありません。その代わりにパンフレットの裏表紙には新たなキャラクター「キュンタ」の特設ムービーのURLが記されています(オリジナルプレゼントについては、書店店頭で対象図書を1冊買うと「キュンタ」のオリジナルしおりが1枚もらえるようです。ちなみに、「新潮文庫の100冊大人買い全点セット」を買うと、「キュンタ」のオリジナルしおりを1箱
(600枚入り!!)もらえるそうです(しおりが600枚もあると、かえって使う気が失せてしまいそうですが、コレクターにとっては魅力的なプレゼントアイテムだと思います)

 作品のジャンルは、昨年と同じ5つですが、パンフレット上で展開する
物語にあわせてジャンルの順序が昨年とは変更されています。また、各ジャンルのリストの前に(小さな町で小さな本屋を営む)おじいさんとロボット(「キュンタ」)の小話がカラフルな色彩で描かれています。小話とはいっても、物語の主人公としてのキャラクターを(例年になく)しっかり描いているように思えます。今年のパンフレットでみられる物語と宣伝を組み合わせる技のうまさは、さすがにCM作りのプロの仕事(今年のキャラクターデザインは博報堂 アートディレクター 柿崎裕生氏が担当)を感じさせるものがあります。アンテナやモニターがついたロボット「キュンタ」の姿からスマホやパソコンが連想され、パンフレットの中では、町の小さな本屋のおじいさんが「キュンタ」からの質問に親切に答えるファンタジーが展開しています(現実には町の小さな本屋さんはスマホやパソコン (Web書店)の普及によって殲滅されようとしていますが・・・)。ちなみに「新潮文庫の100冊」の特設サイトで公開されているショートムービーに登場する「キュンタ」はファンタジーだけではないさまざまな「顔」を持っています。

 今年(2015年)の「100冊」 (私の数え方では98人の作家の計107冊) のうち、新規採用作家(12人)、復活した作家(13人)、交代した作家(26人)の人数については、前年(2014年はそれぞれ、11人、7人、18人)よりも復活、交代が多くなりましたが、2013年
(それぞれ9人、13人、22人)と比べるとほぼ同程度です。ちなみに、昨年(2014年)新規採用された11人の作家のうち、今年も継続採用されたのは4人(阿川佐和子原田マハ平山瑞穂山本博文ほか)、昨年復活した7人の作家については1人カーソンだけ)しか継続採用されていません。

 今年の採用作品をみてゆくと、軍事関係(梯 久美子「散るぞ悲しき」城山三郎「指揮官たちの特攻」吉村 昭「戦艦武蔵」)や歴史に関する作品(網野善彦「歴史を考えるヒント」半藤一利「幕末史」)が交代しているのがわかります。また、小澤征爾の作品も交代しました。今年はこれら作品に流れる「大きな(偉大な?)物語」よりも、大岡昇平「野火」(おそらく2015年7月に公開の映画(監督:塚本晋也)にあわせての採用でしょう・・・)吉村 昭「破獄」のような「個々の(地を這うような?)物語」を採用する傾向があるようにも思えます吉村 昭については、フィリピン沖の海底で発見された戦艦「武蔵」が今春話題になったので、今年も当然「戦艦武蔵」が採用されると思っていました。著者が存命でしたたら、海底に眠る武蔵について補筆したであろうと想像してしまいます・・・)。糸井重里と各分野の専門家による対話集も今年は3作目となりました(1作目は吉本隆明と思想について、2作目は池谷裕二と脳、そして今回は早野龍五と福島の放射能について)。1980年代にNHK教育TVの若者向け番組「YOU」の司会者として糸井重里が毎週さまざまなゲストと対談していたことを思い出します・・・。糸井重里の名前が出たので、80年代末〜90年代はじめにTV番組で話題になった赤城山の徳川埋蔵金探しの顛末をまとめた糸井 重里 (編), 赤城山埋蔵金発掘プロジェクトチーム「あるとしか言えない―赤城山徳川埋蔵金発掘と激闘の記録」(集英社、1993)も(Web上で再評価されつつあるようなので、差し障りがなければ・・・)今後の「100冊」の候補に入れてみたらどうでしょうか?

 海外作家の作品については、今年は採用割合が 17% (=日本人作家の作品数:89/海外作家の作品数:18)となり、昨年の14%からさらに回復しています。今年はバック「カモメのジョナサン」が”完成版”として復活しています(五木寛之による「創訳」という言葉から”シドニィ・シェルダン”を連想できるのは40歳以上の人でしょう・・・)



 今年も5月半ば頃に下の写真のような「中学生に読んでほしい30冊」「高校生に読んでほしい50冊」のパンフレットを書店で目にしました(これらのパンフレットは、新潮文庫のWeb Page「ワタシの一行教育プロジェクト」でもPDFファイルの形で公開されています(2015.7.1現在))。パンフレットの表紙にはどちらも昨年と同じタッチの漫画風イラストが描かれていますが、高校生向けのパンフレットの色合いが水色から抹茶色に変わりました。今年の採用作品を昨年と比較しながら下にまとめてみました(*は今年新たに採用された作品)。中学生向け、高校生向けの採用作品が今年の「100冊」採用作品とは大きく異なっている(中高生向けでは、赤川次郎の作品ヘッセ「車輪の下」山田詠美「ぼくは勉強ができない」が交代している・・・)ので、いろいろ比べてみるとおもしろいと思います(現在の「100冊」のポジションをお菓子に例えるなら、「オトナグリコ」のような存在でしょうか?)
中学生に読んでほしい30冊 高校生に読んでほしい50冊
芥川龍之介 「蜘蛛の糸・杜子春」
有川 浩 「レインツリーの国」
石田衣良 「4TEEN」
* 石原千秋監修・新潮文庫編集部編 「教科書で出会った名詩100」
* 上橋菜穂子 「精霊の守り人」
小川洋子 「博士の愛した数式」
恩田 陸 「夜のピクニック」
川端康成 「伊豆の踊子」
重松 清 「きよしこ」
太宰 治 「走れメロス」
辻村深月 「ツナグ」
夏目漱石 「坊っちゃん」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
野坂昭如 「アメリカひじき・火垂るの墓」
畠中 恵 「しゃばけ」
星 新一 「ボッコちゃん」
松岡圭祐 「ミッキーマウスの憂鬱」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
三島由紀夫 「潮騒」
三浦哲郎 「ユタと不思議な仲間たち」
村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
* 堀 辰雄 「風立ちぬ・美しい村」
湯本香樹実 「夏の庭」
ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
ドイル 「シャーロック・ホームズの冒険」
トウェイン 「トム・ソーヤの冒険」
ヘミングウェイ 「老人と海」
モンゴメリ 「赤毛のアン」
* ロビンソン 「思い出のマーニー」

交代
中沢けい 「楽隊のうさぎ」
山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
アンデルセン 「絵のない絵本」
ボーム 「オズの魔法使い」
 
芥川龍之介 「羅生門・鼻」
朝吹真理子 「きことわ」
安部公房 「砂の女」
有川 浩 「キケン」
池谷裕二 「受験脳の作り方」
* 井上ひさし 「父と暮らせば」
井伏鱒二 「黒い雨」
伊坂幸太郎 「ゴールデンスランバー」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
江國香織 「神様のボート」
遠藤周作 「沈黙」
小澤征爾 「ボクの音楽武者修行」
小川洋子 「博士の愛した数式」
恩田 陸 「夜のピクニック」
川上弘美 「センセイの鞄」
角田光代 「さがしもの」
越谷オサム 「陽だまりの彼女」
佐藤多佳子 「黄色い目の魚」
志賀直哉 「小僧の神様・城の崎にて」
司馬遼太郎 「燃えよ剣 (上・下)」
重松 清 「きみの友だち」
太宰 治 「人間失格」
辻村深月 「ツナグ」
* 筒井康隆 「旅のラゴス」
中島 敦 「李陵・山月記」
夏目漱石 「三四郎」
中村 計 「甲子園が割れた日」
* 西川美和 「その日東京駅五時二十五分発」
橋本 紡 「流れ星が消えないうちに」
* 早野龍五・糸井重里 「知ろうとすること。」
* 原田マハ 「楽園のカンヴァス」
藤原正彦 「若き数学者のアメリカ」
星 新一 「未来いそっぷ」
宮沢賢治 「注文の多い料理店」
三島由紀夫 「金閣寺」
三浦綾子 「塩狩峠」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」
宮本 輝 「蛍川・泥の河」
村上春樹 「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上・下)」
森見登美彦 「太陽の塔」
* 山本美香・日本テレビ編 「山本美香という行き方」
吉本ばなな 「キッチン」
米澤穂信 「ボトルネック」
* O.ヘンリー 「賢者の贈りもの」
カーソン 「沈黙の春」
カフカ 「変身」
* サリンジャー 「フラニーとズーイ」
サン=テグジュペリ 「夜間飛行」
シン 「フェルマーの最終定理」

交代
赤川次郎 「ふたり」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
湯本香樹実 「夏の庭」
リリー・フランキー 「東京タワー」
カポーティ 「ティファニーで朝食を」
シュリンク 「朗読者」
ヘッセ 「車輪の下」
(文中敬称略)
(2015.7.3)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024
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