新潮文庫 夏のキャンペーン広告
新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2024)***


新潮文庫の100冊
(2024年)

○配列
  • [新刊紹介]矢部太郎 「大家さんと僕」*(*パンフレットではジャンル不明ですが、「新潮文庫の100冊2024」のWeb pageでは「泣ける本」に入っています)
  • 愛する本 (19冊) (2023年のジャンル名は「恋する本」:20冊)
  • シビレル本 (20冊) (2023年は18冊)
  • 考える本 (19冊**) **ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」、「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2」は1冊としてカウント (2023年は20冊)
  • ヤバイ本 (20冊) (2023年は20冊)
  • 泣ける本 (18冊)(←矢部太郎「大家さんと僕」を含む) (2023年は19冊)
****** #各ジャンル内の作品はランダムに配列

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家#は10年以上継続して採用されてきた作家

○コメント
 今年(2024年)のパンフレットは黄色のテーマカラーと赤い大きなハートが目立つ表紙のデザインです。表紙には今年で10年目となるキュンタと今年のキャッチフレーズ「この夏の感情はいちどきり。」が描かれています。

 今年
(2024年)も例年どおりの展開と思いながらパンフレットを開くと、久しぶり(2014年以来?)に夏の読書についての巻頭の言葉が復活しています。私は例年「100冊」のパンフレットをもらうと、どんな本が「100冊」なのか知りたくて巻頭の言葉のページはほとんど読まずに飛ばしていました。この機会に過去の巻頭の言葉がどんなものか改めて読み比べてみると(過去の巻頭の言葉はこちらのページを参照)、巻頭の言葉の多くにはその年のキャッチフレーズが巧みに組み込まれていることがわかります。

 2015年から昨年
(2023年)までのパンフレットは、小さな町で小さな本屋を営むおじいさんとキュンタが繰り広げるショート・ストーリーの合間に各ジャンルの「100冊」採用本を紹介する構成でしたが、今年(2024年)はキャラクターとしてだけキュンタが登場し、昨年(2023年)までのようなストーリー展開はみられません。おじいさんは顔のカットが1箇所(2024年パンフレット, p44)あるだけです。

 今年
(2024年)の「100冊」では「恋する本」のジャンル名が「愛する本」に変わってますが、昨年(2023年)と同じ5つの区分で、各ジャンルが20冊前後にそろえられています。また、今年(2024年)は「愛する本」の前に各ジャンルとは別枠扱い*パンフレットではジャンル不明ですが、「新潮文庫の100冊2024のWeb page」では「泣ける本」に入っています・・・)矢部太郎「大家さんと僕」の紹介ページがあります。「文芸」作品で知られる新潮社が「100冊」キャンペーンの冒頭に敢えてマンガ作品を持ってきたのは、従来とは違うスタンスを感じさせてくれます。

 さらに今年
(2024年)は、各ジャンルの冒頭にも「新刊紹介」のコーナーを設け、おすすめの1冊について解説しています。
 そのほか、「読書感想文におすすめの本」のコーナーもあったりして、今年(2024年)のパンフレットからは、
(今までとは違う)現実的な読書への勧誘手法が感じられます(従来は(キュンタのショート・ストーリーのような)「読書の雰囲気」を匂わす手法が多かった気がします・・・)

 今年
(2024年)のプレゼントは、昨年(2023年)同様「ステンドグラスしおり」(昨年(2023年)とは別デザイン。書店で1冊買うとその場でもらえる)です。昨年までの「純金キュンタしおり」プレゼントはありませんが、そのかわりなのか、今年(2024年)プレミアムカバー2024(8種)の他に「ヨルシカ限定コラボカバー」夏目漱石「文鳥・夢十夜」)と杉井 光「世界でいちばん透き通った物語」の夏限定カバー(パンフレットでは地味な紹介ですが、Webでは大きく紹介されていますが用意されています。

 2024年7月1日に公開された今年
(2024年)「100冊」のWebサイトをみると、100冊を紹介するページの他に、フェア小冊子のダウンロード、「QUNTA PARK」(書店員向けサイト)、「Tik tok」動画等が開設されています。

 また、「新潮文庫の100冊」キャンペーンは、2026年に50周年を迎えることもあってか、今年
(2024年)は「100冊」の舞台裏を紹介する2つの座談会が公開されています。

 *その1
 『「どんな人でも好きになれる一冊がある」 - 新潮文庫の100冊フェア』
(新潮社 Recruiting site 2025 「仕事を知る」)
  URL: https://info.shinchosha.co.jp/recruit/work/ (2024年7月閲覧)
 ・・・「新潮文庫の100冊」フェアに携わったメンバーが舞台裏を語る座談会
(2024年1月に新潮社のリクルートサイトのコンテンツとして公開)

 *その2
 「新潮文庫、夏の100冊はじめました - 暑中お見舞い座談会 - 」
  (新潮社PR誌「波」2024年7月号, p108-111)

 これらの座談会の記事を読むと、「新潮文庫の100冊」の準備が私の想像よりもずっと早い時期
(前年の秋)から始まり、編集や営業等で相談を繰り返して翌年2月頃には「100冊」の書名が決定するのを知りました。

 今年
(2024年)の「100冊」については(私のカウント方法では)92人の作家の作品(96冊)が採用されています(私のカウント方法は、上・下等に分冊されている小野不由美司馬遼太郎ブレイディみかこドストエフスキーの作品を1冊とみなしているので、これらの分冊を別々にカウントすればちょうど100冊になります・・・)

 今年
(2024年)の「100冊」に採用された作家の内訳をみてゆくと、新規採用作家(5人)、復活した作家(13人)、交代した作家(17人)となります(昨年(2023年)はぞれぞれ8人、4人、13人、一昨年(2022年)はぞれぞれ4人、10人、17人だったので、今年(2024年)は2022年と同様に作家の復活に重きを置いた方針のような気がします・・・)

 日本人作家の作品と海外作家の作品については、私のカウント方法ではそれぞれ79冊、17冊となり、全体に占める海外作家の作品の割合は18%と昨年
(2023年)とほぼ同じです。

 最後に、今年(2024年)の「100冊」のパンフレットを読んで気がついたことを列挙しておきます。

  • 復活した作家について・・・10年以上前に採用された4人有吉佐和子中島 敦西村賢太帚木蓬生の復活に気がつきました。このうち、有吉佐和子は今年(2024年)が没後40年で、認知症の介護問題を扱った「恍惚の人」により1989年以来35年ぶりに復活しました。
  • 交代した作家について・・・2013年以来採用されてきた池谷裕二が交代した結果、今年(2024年)の「100冊」の心理・脳科学関係の著者は河合隼雄だけになりました。

 今年(2024年)も4月上旬には新潮文庫のWeb Page「ワタシの一行教育プロジェクト」のWebサイトに下の写真のような「中学生に読んでほしい30冊」「高校生に読んでほしい50冊」のパンフレット(PDFファイル)が公開されているのをみつけました。今年もパンフレットの表紙には「キュンタ」が描かれ、表紙の色は中学生向けが緑色、高校生向けがオレンジ色です。
 昨年(2023年)の採用作品の採用作品と比較した結果は下記の通りです
(*は今年新たに採用された作品)
中学生に読んでほしい30冊 高校生に読んでほしい50冊
*芥川龍之介 「地獄変・偸盗」
稲垣栄洋 「一晩置いたカレーはなぜおいしいのか」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
江國香織 「つめたいよるに」
小川洋子 「博士の愛した数式」
恩田 陸 「夜のピクニック」
角田光代 「さがしもの」
* 川上和人 「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」
* 黒柳徹子 「小さいときから考えてきたこと」
* 重松 清 「くちぶえ番長」
瀬尾まいこ 「あと少し、もう少し」
太宰 治 「走れメロス」
辻村深月 「ツナグ」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
夏目漱石 「坊っちゃん」
野坂昭如 「アメリカひじき・火垂るの墓」
ブレイディみかこ 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」
* 星 新一 「ボッコちゃん」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
三島由紀夫 「潮騒」
宮沢賢治 「注文の多い料理店」
村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
湯本香樹実 「夏の庭」
ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
* ケストナー 「飛ぶ教室」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
*ドイル「シャーロック・ホームズの冒険」
ヘッセ「車輪の下」
モンゴメリ 「赤毛のアン」

交代
芥川龍之介 「蜘蛛の糸・杜子春」
小林快次 「恐竜まみれ 発掘現場は今日も命がけ」
重松 清 「きみの友だち」
知念実希人 「天久鷹央の推理カルテ」
星 新一 「悪魔のいる天国」
柚木麻子 「本屋さんのダイアナ」
ルナール 「にんじん」
芥川龍之介 「羅生門・鼻」
* 朝井リョウ 「正欲」
* あさのあつこ「ハリネズミは月を見上げる」
安部公房 「砂の女」
池谷裕二 「受験脳の作り方」
* 伊坂幸太郎 「重力ピエロ」
* 井伏鱒二 「山椒魚」
岩崎夏海 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
* 江國香織 「東京タワー」
* 遠藤周作 「沈黙」
* 江戸川乱歩 「江戸川乱歩名作選」
* 小川 糸 「あつあつを召し上がれ」
小川洋子 「博士の愛した数式」
* 奥野克巳「ありがとうもごめんなさいもいらない森の民〜」
* 小津夜景「いつかたこぶねになる日」
小野不由美 「月の影 影の海」
恩田 陸 「夜のピクニック」
角田光代 「さがしもの」
加藤陽子 「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」
* 川端康成「雪国」
國分功一郎「暇と退屈の倫理学」
沢木耕太郎 「深夜特急1 香港・マカオ」
志賀直哉 「小僧の神様・城の崎にて」
* 杉井 光 「世界でいちばん透きとおった物語」
住野よる 『か「」く「」し「」ご「」と「』
太宰 治 「人間失格」
辻村深月 「ツナグ」
* 津村記久子「サキの忘れ物」
* 高山羽根子「首里の馬」
中島 敦 「李陵・山月記」
* 夏目漱石 「こころ」
* 原田マハ 「常設展示室」
* 原 民喜「夏の花・心願の国」
ブレイディみかこ 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」
* 星 新一 「妖精配給会社」
三浦綾子 「塩狩峠」
* 三浦しをん 「天国旅行」
* 三島由紀夫 「潮騒」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
* 村上春樹 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」
吉本ばなな「キッチン」
* 寮美千子 編「空が青いから白をえらんだのです」
* カーソン「センス・オブ・ワンダー」
カフカ 「変身」
カミュ「異邦人」
シン「フェルマーの最終定理」
* ドストエフスキー「地下室の手記」
* ヘッセ「デミアン」
ヘミングウェイ 「老人と海」

交代
朝井リョウ 「何者」
浅原ナオト 「今夜、もし僕が死ななければ」
伊坂幸太郎 「ゴールデンスランバー」
石田衣良 「4TEEN」
井伏鱒二 「黒い雨」
江國香織 「つめたいよるに」
遠藤周作 「海と毒薬」
江戸川乱歩 「江戸川乱歩傑作選」
王城夕紀 「青の数学」
尾崎世界観/千早茜 「犬も食わない」
川上弘美 「ぼくの死体をよろしくたのむ」
司馬遼太郎 「燃えよ剣」
夏目漱石 「文鳥・夢十夜」
原田マハ 「暗幕のゲルニカ」
星 新一 「ようこそ地球さん」
松岡圭祐 「ミッキーマウスの憂鬱」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
三川みり 「龍ノ国幻想1 神欺く皇子」
三島由紀夫 「金閣寺」
村上春樹 「神の子どもたちはみな踊る」
森見登美彦「太陽の塔」
山田詠美 「蝶々の纏足・風葬の教室」
(文中敬称略)
(2024.7.3)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024
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