新潮文庫 夏のキャンペーン広告
新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2019)***


新潮文庫の100冊
(2019年)

○配列
  • 恋する本 (20冊*) [*七月隆文「ケーキ王子の名推理1, 4」は1冊としてカウント]
  • シビレル本 (21冊)
  • 考える本 (21冊)
  • ヤバイ本 (21冊)
  • 泣ける本 (22冊)
****** #各ジャンル内の作品はランダムに配列

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家#は10年以上継続して採用されてきた作家

○コメント
 今年(2019年)も6月下旬に書店で手に入れた2019年のキャンペーンパンフレットには、本を読むロボット「キュンタ」のショートストーリーが昨年同様カラフルに描かれています。今年のキュンタはスイカを食べています。赤いスイカは暑い夏をイメージさせる効果的なアイテムです2002年のパンフでもスイカが採用されていますが、この時のスイカはモノクロ写真でした・・・)が、冷蔵庫のスペースや家族の少人数化等もあって、大きなスイカ1個を丸ごと買うことは今では希少になった気がします。今年のパンフでも(表紙をめくった)1-2ページ目に描かれているキュンタの暮らす本屋が去年のパンフとほぼ同じ構図で描かれています。去年と今年のイラストを比べてみると、去年は「CLOSE」だった隣の床屋が今年は(おそらく)営業中だったり、今年の本屋の窓の下と2階窓辺の鉢には植物が植えられたりしています。さらに今年のパンフでは本屋の入口脇に特売棚らしきもの(置かれているのは「新潮45」のような雑誌のバックナンバーか?)が描かれています。

 「新潮文庫の100冊」の特設サイトには昨年と同じように過去のキュンタのストーリーキュンタに関するフリーイラストページやLINEスタンプ等が公開されています。
 今年の100冊のオリジナルプレゼントは特製しおり
(今年は「キュンタうちわしおり」)です。昨年同様 TwitterやInstagramを駆使すれば抽選で「純金キュンタしおり」(昨年とは別デザイン)がもらえるそうです。「新潮文庫の100冊大人買い全点セット(110冊)」を「100冊」のWeb Siteから購入すると、今年は「特製プレミアム本革文庫カバー(レッド)」をもらえるそうです。「限定プレミアムカバー」については、全8冊のセットを「100冊」のWeb Siteから購入すると、今年は「特製帆布文庫カバー」をもらえるそうです(昨年は「ニコラ」や「文豪とアルケミスト」とコラボ企画が行われましたが、今年はないようです)

 今年
(2019年)の「100冊」では、過去には採用数に10冊近い差があった「シビレル本」と「考える本」の分野を調整して各ジャンルの本がほぼ同数(20〜22冊)になるよう配慮がされています。今年の「100冊」 (私の数え方では100人の作家の計105冊) のリストをみてゆくと、新規採用作家(4人)、復活した作家(12人)、交代した作家(17人)の人数の傾向は、昨年(2018年はそれぞれ、12人、6人、12人)よりも一昨年(2017年はそれぞれ、6人、9人、17人)に近い(新規採用を抑えて復活と交代を増やす)のように思われます。
 復活及び交代した作家名を見てゆくと、昨年採用された伊丹十三色川武大は交代し、
(昨年交代したばかりの)小林秀雄河合隼雄が復活した上に
三木 清 (1992年以来27年ぶりの復活で、これは2017, 18年にNHK Eテレで放送された「100分de名著」で「考えるヒント」が採り上げられた影響のような気がする・・・)柳田国男 (「遠野物語」での採用は1990年以来29年ぶりです。ちなみに現在の新潮文庫版「遠野物語」には「遠野物語拾遺」は未収録です)坂口安吾ゲーテ が復活し、1990年代初期の採用方針に戻ろうかという感もあります(ここまで戻るなら、日本の「お笑い」を考える上での「古典」といえる小林信彦「日本の喜劇人」も入れてほしかった・・・)高野悦子「20歳の原点」は、1995年以来24年ぶりに「100冊」で採用2017年には「高校生に読んでほしい50冊」に採用実績はありますされましたが、この本のオビには2019年6月に双葉社から刊行された「コミック版 二十歳の原点(コミック版の出版経緯は、次のURLに詳しく紹介されています: https://www.takanoetsuko.com/comicban.htmlのイラストが描かれています(このオビで半分隠れていますが、杉浦康平装丁の素晴らしいカバーデザインは不変で安心しました・・・)深田久弥「日本百名山」の復活(前回(2016年)の採用は「山の日」制定記念か?)は、登山の愛好者でもある新天皇の即位を記念してでしょうか?
 今年の「100冊」では、2000年代から去年まで10年以上採用されてきた作家が4人も交代していて、これは近年にない多い数だと思います
(平成から令和に元号がかわるのを一つの契機にしたのでしょうか?)

 それから、今年の作品データの追加更新作業をしていて気がついた今年の特徴として、作家名を間違えやすい
(紛らわしい?)タイトルの作品がいくつかみられたことです。具体例を挙げると次のとおりです。

 海外作家の作品については、今年は全体に占める採用割合が 17%
(=日本人作家の作品数:83/海外作家の作品数:17)となり、昨年(16%)よりわずかに上昇しましたが、2015年からはほぼ一定の割合(16〜18%)を維持しています。


 今年(2019年)も6月中旬に新潮文庫のWeb Page「ワタシの一行教育プロジェクト」をみると、下の写真のような「中学生に読んでほしい30冊」「高校生に読んでほしい50冊」のパンフレット(PDFファイル)が公開されていました(2019.7.2現在))。今年もパンフレットの表紙には「キュンタ」が描かれています。今年のパンフレット表紙の色は、中学生向けが青色、高校生向けが赤色になり、今までにない強い色が採用されています。
 昨年(2018)の採用作品と比較した結果を下にまとめてみました(*は今年新たに採用された作品)
中学生に読んでほしい30冊 高校生に読んでほしい50冊
芥川龍之介 「蜘蛛の糸・杜子春」
石田衣良 「4TEEN」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
小川洋子 「博士の愛した数式」
恩田 陸 「夜のピクニック」
* 角田光代 「さがしもの」
川端康成 「伊豆の踊子」
重松 清 「きみの友だち」
* 清 邦彦「女子中学生の小さな大発見」
瀬尾まいこ 「あと少し、もう少し」
太宰 治 「走れメロス」
辻村深月 「ツナグ」
中沢けい 「楽隊のうさぎ」
夏目漱石 「坊っちゃん」
梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
野坂昭如 「アメリカひじき・火垂るの墓」
畠中 恵 「しゃばけ」
星 新一 「ボッコちゃん」
* 宮沢賢治 「注文の多い料理店」
三島由紀夫 「潮騒」
村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
柚木麻子 「本屋さんのダイアナ」
湯本香樹実 「夏の庭」
ウェブスター 「あしながおじさん」
ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
ケストナー 「飛ぶ教室」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
ヘミングウェイ 「老人と海」
メーテルリンク「青い鳥」
モンゴメリ 「赤毛のアン」

交代
角田光代 「キッドナップ・ツアー」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
バリー 「ピーター・パンとウェンディ」
ルナール 「にんじん」
 
* 芥川龍之介 「羅生門・鼻」
朝井リョウ 「何者」
安部公房 「砂の女」
彩瀬まる 「あのひとは蜘蛛を潰せない」
池谷裕二 「受験脳の作り方」
井伏鱒二 「黒い雨」
伊坂幸太郎 「ゴールデンスランバー」
上橋菜穂子 「精霊の守り人」
江國香織 「つめたいよるに」
遠藤周作 「沈黙」
大岡昇平 「野火」
王城夕紀 「青の数学」
* 小川洋子 「いつも彼らはどこかに」
小野不由美 「月の影 影の海」
恩田 陸 「夜のピクニック」
* 角田光代 「くまちゃん」
加藤陽子 「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」
川上弘美 「センセイの鞄」
河野 裕 「いなくなれ、群青」
* 沢木耕太郎「深夜特急1」
志賀直哉 「小僧の神様・城の崎にて」
* 司馬遼太郎 「人斬り以蔵」
* 重松 清 「ロング・ロング・アゴー」
須賀しのぶ 「夏の祈りは」
太宰 治 「人間失格」
辻村深月 「ツナグ」
筒井康隆 「旅のラゴス」
中島 敦 「李陵・山月記」
夏目漱石 「三四郎」
原田マハ 「楽園のカンヴァス」
* はるな檸檬「れもん、よむもん!」
* 星 新一 「エヌ氏の遊園地」
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
三島由紀夫 「金閣寺」
三浦綾子 「塩狩峠」
三浦しをん 「風が強く吹いている」
* 湊かなえ「豆の上で眠る」
宮本 輝 「錦繍」
村上春樹 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」
* 森見登美彦「四畳半王国見聞録」
山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
* 吉川トリコ「マリー・アントワネットの日記 Rose/Bleu」
* よしもとばなな 「さきちゃんたちの夜」
米澤穂信 「儚い羊たちの祝宴」
綿矢りさ 「ひらいて」
カーソン 「沈黙の春」
カフカ 「変身」
*サガン「悲しみよこんにちは」
サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
ジェイコブズ 「ある奴隷少女に起こった出来事」

交代
芥川龍之介 「地獄変・偸盗」
小川洋子 「博士の愛した数式」
角田光代 「さがしもの」
重松 清 「卒業」
司馬遼太郎 「燃えよ剣 (上・下)」
中 勘助 「銀の匙」
西川美和 「その日東京駅五時二十五分発」
羽生善治、伊藤毅志、松原 仁 「先を読む頭脳」
星 新一 「未来いそっぷ」
道尾秀介 「向日葵の咲かない夏」
吉本ばなな 「キッチン」
O.ヘンリー 「賢者の贈りもの」
オースティン 「自負と偏見」
(文中敬称略)
(2019.7.2)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024
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