新潮文庫 夏のキャンペーン広告
新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2010)***


新潮文庫の100冊
(2010年)
   

○配列
  • 名作(ランダム)
  • 現代文学(ランダム)
  • 海外文学(ランダム)
  • エッセイ・ノンフィクション(ランダム)

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家#は10年以上継続して採用されてきた作家

○コメント
 今年のパンフレット表紙のYondaくんは何に乗っているのでしょうか?青い小舟のようにも見えますが、2004年のパンフ表紙に描かれたような波も帆もありません。今年のプレゼントであるバンダナ(ヨンダナ)を折ってつくった船に乗って、リゾートに出かけた気分に浸っているのでしょうか?
 今年のカラーは赤、青、緑といった原色系でまとめられ、イラストはどれもこぢんまりとした印象となっているのは、パソコンやケータイ上での各種サービスと共通して使えるようなデザインにしたからだと思われます。今年のキャンペーンは、100冊キャンペーンのWeb Page開設の他に、期間限定(6月1日〜9月25日)で現在流行している
(らしい)Twitterによる情報発信も行われています。キャンペーンの情報発信がWeb側にシフトしているせいか、今年のパンフレットには、例年には掲載されることが多いロングセラーのリスト等が省略されています。

 今年の採用作品のリストをみてゆくと、2010年代最初の年であるせいか、近年にないラインナップの変更が行われています。2000年代の採用作品の"棚卸し"
といったところでしょうか(ちなみに、昨年のコメント欄で列挙した4人の作家については、その返答のように今年は採用されていますがこれは単なる偶然でしょう・・・)
  復活した作家名をみてゆくと、時代小説系(?)の3人の作家(杉浦日向子藤沢周平隆慶一郎)が10年ぶりに採用されたのが目を引きます。この3作家は、過去には
2000年だけの採用(2001年には3人とも交代)だったので、今年の同時復活は偶然でない気がします(2000年当時の100冊選定者が今年の選定に関わったのでしょうか?)
 交代した作家の中では、10年以上採用されてきた2人の海外作家(ルイス・キャロルリチャード・バック)についてコメントしたいと思います。ルイス・キャロルは、1996年以来採用されてきましたが、映画「アリス・イン・ワンダーランド」が最近公開されたことや近年少なくなった海外作家の作品数がさらに減ることになる(後述)ことを考えると、タイミング的には来年以降の交代でもよかった気もします。1979年以来の常連だったリチャード・バック「かもめのジョナサン」(訳者:五木寛之)の交代は、この作品がベストセラーになったことやその余韻
(私は、この本を読んだことはありませんが、ベストセラー後も長い間このタイトルにちなんだ多くの駄洒落やパロディ等が流布した時代を知っています・・・)がはっきりと過去の時代(ちなみに、今年発行の「きみに読んでほしい50冊2010」には採用されているので、「寓話の名作」としては残るのでしょう)になったという感慨を覚えます。

*海外作品の低下傾向について
 2008年のコメント欄にも書きましたが、近年みられる大きな傾向として、採用される海外作品が次第に減少している点があります。
 この傾向は今年もさらに進み、採用作品数及び全体に占める割合ともに過去最低となりました(下の表を参照)。

西暦 採用作品数 採用作品数にしめる
海外作品数の割合
日本 海外
2008年以前 2008年のコメント欄を参照
2009 84 20 19%
2010 90 16 15%

 日本/海外作品の比率は出版社や読者等多くの要因の反映であるため、
(為替相場のように)時代によって変動してゆくのが自然だとは思います。それでも全体の9割弱が日本の作品というのは、(Web書店から洋書を簡単に入手できるようになった現状を考えても・・・)内向きすぎる印象を持ってしまいます。(版権や採算等の点で)無理を承知で私の勝手な希望を書くとすれば、海外の名作や最近の話題作でなくても、P. G. ウッドハウスの"ジーブス"もの(最近になって国書刊行会や文藝春秋社等から単行本が刊行されていますが・・・)のような海外ではコナン・ドイルと並ぶくらい誰もが常識として知っている小説(文学的に重要かどうかは不問)で、日本ではこれまでほとんど紹介されてこなかったような作品を入れてほしいものです(唐突な例としてP. G. ウッドハウスのことを挙げたのは、比較的最近この作家の存在を思い知らされた経験をしたからです.。それは、海外のそれぞれ異なる国から来日した2人の方と雑談をしていた時のこと、"ジーブス"ものの典型的なシチュエーションの話題で盛り上がる2人の前で、ジーブスについて何の知識もない私は途方にくれるしかなかった・・・)

*付記
 今年も書店で「きみに読んでほしい50冊 2010」の青いパンフレット(写真左)をみつけました。
 表紙のデザインや選定された50冊のラインナップは、昨年とは変更がありませんでした
(今年の方が少し深い青色のようです)
 
細かく見てゆくと、巻頭にある「アナタにぴったりの本は?」(フローチャートの設問を答えてゆくと、自分にあった本を50冊のなかから選択できるコーナー)の設問部分は更新(それでいて、設問の解答であるA〜Hの各グループは、昨年とまったく同じなのは不思議ですが、これは、固定された解答に合わせて設問だけを入れ替えた担当者の"職人技"に感心するべきなのでしょう)されていました
(文中敬称略)
(2010.7.1)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024
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