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新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2008)***



新潮文庫の100冊
(2008年)
*
○配列
  • 名作(ランダム)
  • 現代文学(ランダム)
  • 海外文学(ランダム)
  • エッセイ・ノンフィクション(ランダム)

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家#は10年以上継続して採用されてきた作家: ※今年は該当作家なし


○コメント

 今年の100冊のパンフレット(写真右側)は、例年どおりYondaくんのキャラクターですが、基調の黄色と黒の2色以上に誌面に占める緑色の割合が大きくなっています。どうやらYondaくんも「エコ」に関心があるよう(ちなみに今年の読者プレゼントはエコバック)です。新潮文庫の100冊のHPも昨年同様に充実していて、過去の100冊に関するさまざまな情報や「100冊検定」等で楽しめるようになっています。
 今年採用された作家数は昨年と同じ98人(105冊)でした。複数作品(2冊)を採用している作家(夏目漱石芥川龍之介太宰治三島由紀夫湯本香樹実重松清唯川 恵)や1年毎に採用作品を交互に変えている作家(川端康成森鴎外)の他に、Aグループ(今年採用:竹山道雄林芙美子樋口一葉武者小路実篤サリンジャー)とBグループ(今年交代:伊藤左千夫高村光太郎サガン)の間で1年毎にローテーションを行う体制もできつつあるようにも思えます。
 また、今年は報道などで話題になっているプロレタリア文学の小林多喜二の作品が約30年ぶりに復活しましたが、これは"社会枠"の島崎藤村と交代する形式をとっている印象を持ちました(近年顕著になってきた貧困の"復活"の点では、石川啄木のリスト入りも小林多喜二と共通するものを感じます)。
 他に気になった点としては、2005年から始まった海外文学の採用数の減少傾向
(詳しくは下の表を参照)が今年も続いていて、今年は21作品にまで減少しました(シェイクスピアは今年も採用されなかった)。文学の世界も"海外より日本"という内向きの傾向が影響しているのでしょうか?

* 西暦 採用作品数 採用作品数にしめる
海外作品数の割合
*
日本 海外
1961 73 41 36 %
1962 78 44 36 %
1963 25 19 43 %
1964 20 36 64 %
1965 39 23 37 %
1966 28 27 49 %
1967 39 29 43 %
1968 36 14 28 %
1969 69 31 31 %
1970 59 41 41 %
1971 67 33 33 %
1972 71 29 29 %
1973 71 29 29 %
1974 71 29 29 %
1975 75 25 25 %
1976 76 24 24 %
1977 74 26 26 %
1978 74 26 26 %
1979 74 26 26 %
1980 73 27 27 %
1981 76 24 24 %
1982 81 19 19 %
1983 77 23 23 %
1984 76 24 24 %
1985 76 24 24 %
1986 77 23 23 %
1987 78 22 22 %
1988 74 26 26 %
1989 74 26 26 %
1990 71 29 29 %
1991 69 31 31 %
1992 68 32 32 %
1993 68 32 32 %
1994 64 36 36 %
1995 69 31 31 %
1996 68 32 32 %
1997 70 30 30 %
1998 79 21 21 %
1999 76 24 24 %
2000 118 32 21 %
2001 96 25 21 %
2002 88 24 21 %
2003 79 25 24 %
2004 80 23 22 %
2005 76 27 26 %
2006 81 24 23 %
2007 83 22 21 %
2008 84 21 20 %
2009 84 20 19 %
2010 90 16 15 %
2011 94 15 14 %
2012 89 19 18 %
2013 98 13 12 %
2014 95 16 14 %
2015 89 18 17 %
2016 85 18 17 %
2017 83 18 18 %
2018 88 17 16 %
2019 83 17 17 %
2020 81 16 16 %
2021 84 14 14 %
2022 76 19 20 %
2023 80 17 18 %
2024 79 17 18 %
西暦 日本 海外 採用作品数にしめる
海外作品数の割合
採用作品数
 ※2013.7.4 : 2008年以降のデータを追加
  2014.7.5 : 2014年のデータを追加
  2015.7.3 : 2015年のデータを追加
  2016.7.2 : 2016年のデータを追加

  2017.7.2 : 2017年のデータを追加
  2018.7.2 : 2018年のデータを追加
  2019.7.2 : 2019年のデータを追加
  2020.7.12 : 2020年のデータを追加
  2021.7.5 : 2021年のデータを追加
  2022.7.13 : 2022年のデータを追加

  2023.7.17 : 2023年のデータを追加
  2024.7.3 : 2024年のデータを追加


*付記
 上の写真左側の青いパンフレット「きみに読んでほしい50冊 2008」は、今年の5月に書店でみつけました。
 このパンフレットは主に中学校向けに配布されたらしく、書店ではこのキャンペーンは大きく行わなかったかったようです(この企画がいつからはじまったのかは不明ですが、Web等で調べた限りでは
2007年#にも同じようなパンフレットがつくられ、学校向けに配布されたそうです)。
 このキャンペーンについては新潮社のHPにも情報がないので、関心のある方の参考までに今年(2008)のパンフレットに掲載された50冊のリストを下に挙げておきます(配列はパンフレット掲載順です)。
  • 芥川龍之介 「羅生門・鼻」
  • 芥川龍之介 「地獄変・偸盗」
  • 芥川龍之介 「蜘蛛の糸・杜子春」
  • 安部公房 「砂の女」
  • 井伏鱒二 「黒い雨」
  • 伊藤左千夫 「野菊の墓」
  • 井上 靖 「あすなろ物語」
  • 遠藤周作 「沈黙」
  • 江國香織 「つめたいよるに」
  • 大岡昇平 「野火」
  • 大江健三郎 「死者の奢り・飼育」
  • 小川洋子 「博士の愛した数式」
  • 恩田 陸 「夜のピクニック」
  • 川端康成 「伊豆の踊子」
  • 開高 健 「パニック・裸の王様」
  • 重松 清 「ナイフ」
  • 重松 清 「きよしこ」
  • 太宰 治 「人間失格」
  • 太宰 治 「走れメロス」
  • 太宰 治 「お伽草紙」
  • 壷井 栄 「二十四の瞳」
  • 辻 仁成 「そこに僕はいた」
  • 夏目漱石 「坊っちゃん」
  • 夏目漱石 「三四郎」
  • 夏目漱石 「こころ」
  • 中島 敦 「李陵・山月記」
  • 梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
  • 新田次郎 「八甲田山死の彷徨」
  • 星 新一 「ボッコちゃん」
  • 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
  • 宮沢賢治 「注文の多い料理店」
  • 三島由紀夫 「潮騒」
  • 三島由紀夫 「金閣寺」
  • 三浦綾子 「塩狩峠」
  • 武者小路実篤 「友情」
  • 村上春樹 「蛍・納屋を焼く・その他の短編」
  • 森 鴎外 「山椒大夫・高瀬舟」
  • 山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
  • 湯本香樹実 「夏の庭」
  • 吉本ばなな 「キッチン」
  • ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
  • O.ヘンリ 「O.ヘンリ短編集」
  • カフカ 「変身」
  • カミュ 「異邦人」
  • カーソン 「沈黙の春」
  • サン = テグジュペリ 「星の王子さま」
  • ドイル 「シャーロック・ホームズの冒険」
  • バック 「かもめのジョナサン」
  • ヘッセ 「車輪の下」
  • ヘミングウェイ 「老人と海」
 このリストを見てゆくと、オーソドックスな作品が選ばれているという印象を受けました。パンフレットの巻頭には藤原正彦氏と相武紗季さんによるショートコラムが掲載されていて、青少年向けという方針が明確だった、かつて(1990年代前半頃までか?)の「新潮文庫の100冊」の'スピリット'でつくられているように思えます。

#追記(2008.10.21)
 
その後、「きみに読んでほしい50冊」の2007年版パンフレットを入手し、2008年版と比べてみると、ロングセラー20のリストと相武紗希さんのショートコラムの写真が異なっているだけであとは同じ内容でした。
(文中敬称略)(2008.6.30)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024
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