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新潮文庫ベスト100
新潮文庫の100冊
*** コメント (2023)***


新潮文庫の100冊
(2023年)

○配列
  • 恋する本 (20冊) (2022年は20冊)
  • シビレル本 (18冊) (2022年は18冊)
  • 考える本 (20冊) (2022年は20冊)
  • ヤバイ本 (20冊) (2022年は19冊)
  • 泣ける本 (19冊) (2022年は18冊)
****** #各ジャンル内の作品はランダムに配列

★新規採用作家

●復活した作家

▼交代した作家#は10年以上継続して採用されてきた作家

○コメント
 今年(2023年)のパンフレットも例年通りキュンタが描かれ、昨年(2022年)と同じく表紙にはサブタイトル「想像力の旅に出よう。」が記されています。黄色と青色が目立つ表紙のデザインは、昨年(2022年)のパンフレットと並べてみると雰囲気が似ています。
 今年
(2023年)(久しぶりに・・・)キュンタがイルカに乗って海に出かける夏らしいストーリー展開です。おそらくこれは2023年5月に発表された(新型コロナウイルス感染に伴う)行動制限解除の反映なのでしょう。
 今年
(2023年)の「100冊」のオリジナルプレゼントは、昨年(2022年)同様「ステンドグラスしおり」(昨年(2022年)とは別デザイン)です。TwitterやInstagramを駆使すれば抽選で「純金キュンタしおり」(昨年(2022年)とは別デザイン)が当たるのも例年通りですTwitterについては、あれこれ仕様変更が行われて従来ほど快適には使えないようです(2023年7月時点)・・・)
 今年
(2023年)パンフレットの構成についても昨年(2022年)とほぼ同じです。
 今年
(2023年)「100冊」のWebサイトは昨年(2022年)と同様に過去のキュンタのストーリーやキュンタに関するフリーイラストページ、LINEスタンプ、「Tik tok」動画が開設されています。今年(2023年)の「100冊」のWebサイトでは新たに「書店さま向けフェア小冊子追加注文」の項目が設けられているのに気がつきました。2023年7月始めに近所や神保町にある何軒かの書店に立ち寄ったところ、どの書店でも(新潮文庫に限らず・・・)夏の文庫フェアの展開が例年と比べて小さく、各社のキャンペーン・パンフレットが目立たない置かれ方をしている印象を受けました。これは、今年(2023年)になって日常生活の各所でレシート等の紙の利用廃止の理由付けにされるDXやSDGs(+経費節減?)の反映なのでしょうか?
 今年
(2023年)の「100冊」は私のカウント方法では)93人の作家の作品(97冊)が採用されています。昨年(2022年)は94人の作家の作品(95冊)の採用だったので、今年(2023年)は昨年(2022年)とほぼ同等といえそうです私のカウント方法では加藤シゲアキ、村上春樹、ドストエフスキーについては2分冊を1冊としてカウントしているので、これらの分冊を別々にカウントするなら100冊になります・・・)
 今年
(2023年)の「100冊」に関する作家の内訳をみてゆくと、新規採用作家(8人)、復活した作家(4人)、交代した作家(13人)となります(昨年(2022年)はぞれぞれ4人、10人、17人だったので、今年(2023年)は新規採用を多くする方針なのでしょう・・・)
 
私のカウント方法での集計結果ですが・・・)日本人作家の作品と海外作家の作品については、それぞれ80冊、17冊となり、全体に占める海外作家の作品の割合は18%になりました(ちなみに、海外作家作品の割合の推移はこちらにまとめてあり、最近10年間は14%〜20%の範囲内で変動しています

 以下、今年の「100冊」のパンフレットを読んで気がついたことを記しておきます。

  • 料理研究家の土井善晴が新規採用される
     ・・・今年
    (2023年)の新規採用作家の中で私が注目するのは料理研究家の土井善晴です。「100冊」のラインナップは、さまざまな分野のバランスをとって編成(「日本名作文学」、「西洋名作文学」、エッセイ、哲学・思想、サイエンス、時代小説、紀行・・・等)されていて、今年(2023年)の土井善晴の採用は「エッセイ」分野なのかもしれませんが、今後「料理」(「グルメ」とは違う・・・)という新たな分野が定着するかも?と私は思っています。
  • 沢木耕太郎の新刊の単行本「天路の旅人」について
     ・・・沢木耕太郎「深夜特急」は2020年から「100冊」への採用が続いていますが、
    (それはさておいて・・・)太平洋戦争末期から戦後にかけてチベットに潜入した西川一三(1918-2008)の行動を描いた新刊の単行本「天路の旅人」(新潮社、2022年)が評判になり、さらに対象が私の関心のある地域(個人的な関心から翻訳していたチベットの地誌の一部を最近ようやく公開しました・・・)なので早速読みました。今年(2023年)「ダライ・ラマ六世恋愛詩集」(今枝由郎・海老原志穂 編訳、岩波文庫、2023年)や石濱裕美子「物語チベットの歴史」(中公新書、2023年)のような一般向けチベット関係の新刊が相次いで刊行されているので、個人的には木村肥佐生「チベット潜行十年」(中公文庫、1982年)や松原正毅「青蔵紀行 揚子江源流域をゆく」(中公文庫、1992年)のようなチベットの地理を記した本を復刊してほしいものです。
     「天路の旅人」は、西川一三の著した著作をわかりやすく整理した良い本だと思います。
     この本の中で西川一三が越えたヒマラヤ山脈の峠としてたびたび登場する「ザリーラ峠」は、チベット側の呼称であり、通常は「Jelep La」
    (標高は4390m、4374m等の表記あり)として地図には記載されています(下記URLも参照)
     https://en.wikipedia.org/wiki/Jelep_La

     ちなみに、この本のp308には、”ザリーラ峠
    (Jelep La)を越えるとカンチェンジュンガが見え、その西方にはナンガ・パルバットも見えた”というような記述がありますが、カンチェンジュンガはともかく)ヒマラヤ山脈の西端に位置するナンガ・パルバット(8126m)は地理的には見えるはずのない遠方なのでまったくの誤記です(例えていうなら、「東京からサハリンの山が見えた」というようなヘンテコ記述です・・・)。文庫化等の際にはおそらく訂正等がされると思われます。


    *2025/7追記
     2025年に「天路の旅人」は新潮文庫に(上・下)2分冊で収録されたので、ザリーラ峠(Jelep La)からの展望についての記述を確認したところ、"ナンガ・パルバットも見えた"という記述はなくなっていました。この記述がどの段階でなくなったのか確かめるために、単行本(5刷)の該当箇所を見たところ、こちらも文庫本と同様に記述がなくなっていたので記述の訂正は単行本増刷時に行われたと推測されます。なお、ナンガ・パルバットが見えるという記述は、沢木耕太郎の脚色ではなく、西川一三が書いたものに由来します(西川一三「秘境西域八年の潜行(中巻)」 p499-500に該当箇所があります)。


     今年(2023年)も4月の下旬には新潮文庫のWeb Page「ワタシの一行教育プロジェクト」のWebサイトに下の写真のような「中学生に読んでほしい30冊」「高校生に読んでほしい50冊」のパンフレット(PDFファイル)が公開されているのをみつけました。今年もパンフレットの表紙には「キュンタ」が描かれ、表紙の色は中学生向けがオレンジ色、高校生向けが緑色です。
     昨年(2022年)の採用作品の採用作品と比較した結果は下記の通りです
    (*は今年新たに採用された作品)
    中学生に読んでほしい30冊 高校生に読んでほしい50冊
    芥川龍之介 「蜘蛛の糸・杜子春」
    * 稲垣栄洋 「一晩置いたカレーはなぜおいしいのか」
    上橋菜穂子 「精霊の守り人」
    * 江國香織 「つめたいよるに」
    小川洋子 「博士の愛した数式」
    恩田 陸 「夜のピクニック」
    角田光代 「さがしもの」
    * 小林快次 「恐竜まみれ 発掘現場は今日も命がけ」
    重松 清 「きみの友だち」
    瀬尾まいこ 「あと少し、もう少し」
    太宰 治 「走れメロス」
    知念実希人 「天久鷹央の推理カルテ」
    辻村深月 「ツナグ」
    梨木香歩 「西の魔女が死んだ」
    夏目漱石 「坊っちゃん」
    野坂昭如 「アメリカひじき・火垂るの墓」
    ブレイディみかこ 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」
    * 星 新一 「悪魔のいる天国」
    三浦しをん 「風が強く吹いている」
    三島由紀夫 「潮騒」
    宮沢賢治 「注文の多い料理店」
    村上春樹 「海辺のカフカ (上・下)」
    * 山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
    柚木麻子 「本屋さんのダイアナ」
    湯本香樹実 「夏の庭」
    ヴェルヌ 「十五少年漂流記」
    サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
    ヘッセ「車輪の下」
    モンゴメリ 「赤毛のアン」
    * ルナール 「にんじん」

    交代
    江國香織「号泣する準備はできていた」
    中沢けい 「楽隊のうさぎ」
    百田尚樹 「夏の騎士」
    星 新一 「ボッコちゃん」
    町田そのこ「コンビニ兄弟」
    米澤穂信 「ボトルネック」
    芥川龍之介 「羅生門・鼻」
    朝井リョウ 「何者」
    浅原ナオト 「今夜、もし僕が死ななければ」
    * 安部公房 「砂の女」
    池谷裕二 「受験脳の作り方」
    * 伊坂幸太郎 「ゴールデンスランバー」
    * 石田衣良 「4TEEN」
    井伏鱒二 「黒い雨」
    * 岩崎夏海 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
    上橋菜穂子 「精霊の守り人」
    * 江國香織 「つめたいよるに」
    * 遠藤周作 「海と毒薬」
    * 江戸川乱歩 「江戸川乱歩傑作選」
    王城夕紀 「青の数学」
    小川洋子 「博士の愛した数式」
    * 尾崎世界観/千早茜 「犬も食わない」
    小野不由美 「月の影 影の海」
    恩田 陸 「夜のピクニック」
    * 角田光代 「さがしもの」
    加藤陽子 「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」
    * 川上弘美 「ぼくの死体をよろしくたのむ」
    國分功一郎「暇と退屈の倫理学」
    * 沢木耕太郎 「深夜特急1 香港・マカオ」
    志賀直哉 「小僧の神様・城の崎にて」
    * 司馬遼太郎 「燃えよ剣」
    住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』
    太宰 治 「人間失格」
    辻村深月 「ツナグ」
    中島 敦 「李陵・山月記」
    * 夏目漱石 「文鳥・夢十夜」
    * 原田マハ 「暗幕のゲルニカ」
    ブレイディみかこ 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」
    * 星 新一 「ようこそ地球さん」
    松岡圭祐 「ミッキーマウスの憂鬱」
    三浦綾子 「塩狩峠」
    * 三浦しをん 「風が強く吹いている」
    三川みり 「龍ノ国幻想1 神欺く皇子」
    三島由紀夫 「金閣寺」
    宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
    * 村上春樹 「神の子どもたちはみな踊る」
    * 森見登美彦「太陽の塔」
    * 山田詠美 「蝶々の纏足・風葬の教室」
    吉本ばなな「キッチン」
    カフカ 「変身」
    * カミュ「異邦人」
    サン=テグジュペリ 「星の王子さま」
    ジェイコブズ 「ある奴隷少女に起こった出来事」
    * シン「フェルマーの最終定理」
    ヘッセ「車輪の下」
    ヘミングウェイ 「老人と海」

    交代
    江國香織 「きらきらひかる」
    遠藤周作 「沈黙」
    角田光代 「くまちゃん」
    河野 裕 「さよならの言い方なんて知らない。」
    佐藤多佳子「明るい夜に出かけて」
    重松 清 「せんせい。」
    白河三兎 「冬の朝、そっと担任を突き落とす」
    高野秀行 「謎のアジア納豆」
    夏目漱石 「三四郎」
    原田マハ 「楽園のカンヴァス」
    藤井青銅 「『日本の伝統』の正体」
    星 新一 「ボッコちゃん」
    町田そのこ「コンビニ兄弟」
    三浦しをん 「きみはポラリス」
    村上春樹 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」
    森見登美彦「四畳半王国見聞録」
    山田詠美 「ぼくは勉強ができない」
    米澤穂信 「ボトルネック」
    カーソン 「センス・オブ・ワンダー」
    カミュ「ペスト」
    ゲーテ 「若きウェルテルの悩み」
(文中敬称略)
(2023.7.17)

新聞広告・パンフレット表紙の変遷
キャッチフレーズ・キャラクターの変遷
キャンペーン・プレゼント等の変遷
採用作品の変遷
コメント 参考資料・註
旧稿(1998), 1999, 2000-2001, 2002-2004, 2005, 2006, 2007, 2008, 2009, 2010
2011, 2012, 2013, 2014, 2015, 20162017, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024, 2025
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