ヒマラヤ - 7000m以上の山々 - *

* Set up 2008/4/1
* Updated 2024/4/23

ヒマラヤ - 7000m以上の山々 -

崑崙山脈 (Kunlun Mountains)



 崑崙山脈は青蔵高原の北に広がる山系で、多くの山脈から構成されている(下図参照)。崑崙山脈の範囲については議論の余地*1はあるが、このWeb Siteでは東はアムネマチン山脈付近に始まり、西は東経76度付近に終わる範囲の山系として扱い、コングール山群ムスターグ・アタ山群パミールに含めることにしている。
 19世紀末から20世紀始めにかけてこの地域を探った探検家たちの報告などから、崑崙山脈には多数の7000m峰が存在するとかつてはいわれ、いくつかの山には長い間7500mを超える標高が与えられていた*2。しかし、1970年代後半以降中国や諸外国による調査が進んだ結果、現在では7000m峰については西部崑崙山脈に1座しか存在しないことが判明している(上越山岳協会、中国人民体育出版社81, p48-49、吉沢84, p163)。
 # 印はかつては7000m以上の山が存在するといわれた山脈である。

ヒマラヤ Himalaya
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崑崙山脈 Kunlun Mountains
*****|----->> # アムネマチン山脈  # Anyemaqen Mountains
*****|----->> # バヤンカラ山脈  # Bayankala Mountains
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|----->> # アルカ山脈  # Arkatag Mountains
*****|----->> # ウルグ・ムズターグ山脈  # Ulugh Muztag Mountains
*****|----->> # ウズ・ターグ山脈  # Uzu Tag Mountains
*****|----->> 西部崑崙山脈 Western Kunlun Mountains
*****|----->> # カラタシュ山脈  # Karatax Mountains
*****|----->> # 塔什庫祖克山脈 # Taxkozuk Mountains
*****|----->> ( コングール山群 Kongur Group )-> パミール Pamir 参照
*****|----->> ( ムスターグ・アタ山群 Muztag Ata Group )-> パミール Pamir 参照

 崑崙山脈での登山活動としては、1960年に中国隊がアムネマチン II に登頂した記録(当時はアムネマチン主峰に登頂したものとされた)があるが、本格化するのは中国領内の山が外国登山隊に"解禁"された1980年以降のことである。

[2009.11追記]
 その後の調査で、西部崑崙山脈を構成する小山脈や塔什庫祖克山脈(Taxkozuk Mountains)にもかつては7000m級の山の表示のある地図をみつけたので、下記の概念図を一部改訂した。





Kunlun and the surrounding Mountains

* Kunlun Mountains (崑崙山脈)
* A1 : Anyemaqen Mountains (阿尼瑪卿山)
AM: Anyemaqen (瑪卿崗日) (6282m)

A2 : Bayankala Mountains (巴顔喀喇山脈)
BK: Bayankala (巴顔喀喇山) (5267m)

A3 : Burhan Budai Mountains (布尓汗布達山)

A4 : Bokaliktag Mountains (博卡雷克塔格山)

A5 : Arkatag Mountains (阿尓格山)
BD: Buka Daham (布喀逹坂峰) (6860m)

A6 : Ulugh Muztag Mountains (木孜塔格山)
UM: Ulugh Muztag (木孜塔格山) (6973m)

A7 : Kokoxili Mountains (可可西里山)
KZ: Kangzhag Ri (崗札日) (6305m)

A8 : Tokkuzdaban Mountains (托庫孜達坂山)

A9 : Uzu Tag Mountains (烏斯塔格山脈)
AT: Ak Tag (阿克塔格) (6748m)

A10 : Western Kunlun Mountains (西部崑崙山脈)
    *ХРЕБЕТ УСТЮНТАГ (烏斯騰塔格)
CM: Qong Muztag (瓊木孜塔格) (6962m)
   
    *ХРЕБЕТ ЛЮШИШАНЬ (Liuszi-szan)
P7167: Kunlun Goddess (崑崙女神峰) (7167m)
CP: Cholpanglik Muztagh (6524m)
   
    *ХРЕБЕТ КАРАНГУТАГ and/or ГОРЫ КАРАНГУТАГ (Karanguta-szan)
    AR: Arsai (阿尓賽依) (6360m)
   
    *ХРЕБЕТ СУГЕТТАГ or 喀拉塔格山 (Karatag Shan)
    Pk4: Pk 4/51L (6076m)
    Pk3: Pk 3/51L (5967m)

A11 : Karatax Mountains (喀拉塔什山脈)
MZ: Muztag (慕士山) (6638m)

A12 : Taxkozuk Shan (塔什庫祖克山脈)
  Pk97: Peak 97 (c5920m)

B : Qilian Mountains (祁連山脈)

C : Danghe Nan Shan (党河南山)

D : Altin Tag (阿爾金山脈)
AC: Altin (阿爾金山) (5798m)

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概念図 (Maps)
・青蔵高原山峰図89m
・青蔵高原自然景観図90m・・・青蔵高原及び崑崙山脈の地形を1枚で見渡せる多色刷の地図
・Kielkowski 2005, p456-459
・譚86・・・崑崙山脈を構成する山脈の様子がわかる概略図
・上越山岳協会・中国人民体育出版社81, p46
・Gecko Maps2005m
・Gizi Map2005m
・Bartholomew92m
・西蔵自治区地図95m
・西蔵自治区交通図90m
・松本・松原87, 表裏見開き・・・東部崑崙を構成する山脈がわかりやすく描かれている
・関口82m
・ヒマラヤ No. 199 (88-6), p3・・・崑崙山脈のわかりやすい概略図
・中国地図出版社2001, p45-46, p49-50
・信濃高等学校教職員山岳会2011, p22・・・崑崙山脈を構成する山脈がわかりやすく描かれている
青蔵高原地図79m

参考文献 (References)
・日本ヒマラヤ協会2001b, p168-173, p190-202・・・1980年以降の崑崙山脈の登山小史
・上越山岳協会・中国人民体育出版社81
・吉沢84, p163
・岩田他95, p49-52
・中国地図出版社97
・譚86・・・中国側資料による崑崙山脈の範囲を紹介
・上越山岳協会82
・ヒマラヤ No. 287 (95-10), p19-23・・・1980年以降の崑崙山脈(ウルグ・ムスターグ以西)の登山小史
・ブースマン83
・深田73(3), p412-422・・・19世紀終わりから20世紀初めにかけての崑崙周辺の探検記録を紹介
http://wiki.risk.ru/index.php/%D0%9A%D1%83%D0%BD%D1%8C%D0%BB%D1%83%D0%BD%D1%8C ・・・崑崙山脈を構成する小山脈や主要な山に関する詳しい解説 (ロシア語。accessed 2009/10/28)
・児玉2010・・・古代から清末にわたる漢籍の地誌上にみられる天山山脈と崑崙山脈の記述について解説
・Ward91/92・・・崑崙山脈の解説
・信濃高等学校教職員山岳会2011, p39・・・崑崙山脈の登山小史
・周2023・・・現在では巨大な山系となった(自然地理的)「崑崙山脈」の歴史的推移について言及されている

註 (Notes)
*1: 崑崙山脈の範囲については、四川盆地北部から東経75度付近までとし、コングール山群ムスターグ・アタ山群も崑崙山脈に含める文献がある(上越山岳協会・中国人民体育出版社81, p46、譚86、Neate89、史93, p102)。
しかし、近年中国で発行された山岳地図(蘭州氷河研究所94m3)では上記の2山群をパミールに含めているため、このWeb Siteでもパミールに入れることにした。
なお、1981年のアムネマチン登山隊に参加した水津重雄隊員はアムネマチン山群が崑崙山脈に属することに対して若干の疑問を示している(上越山岳協会82, p259)。
 崑崙山脈の大区分については、東部(崑崙東端~コラムルン峠(東経87°付近))、中部(コラムルン峠~ユルンカシュ河源流(東経82°付近))、西部(ユルンカシュ河源流~崑崙西端)に三分する方法が従来から存在している(上越山岳協会・中国人民体育出版社81, p47、吉沢84, p163)。
しかし、現在では崑崙山脈を構成する多くの山脈の詳細が明らかになり、従来の三区分にはいくつかの欠点がみられる
(例えば、1: 崑崙東部の範囲が中部及び西部に比べて広すぎる。2: 各地域を分ける地点が崑崙を構成する山脈の区分に対応していない)ため、このWeb Siteでは崑崙山脈の大区分は行わないことにした。

*追記: 崑崙山脈を東部・中部・西部に三分したのはドイツの地理学者リヒトホーフェン(1833-1905)であり、彼の著書には下記のように記述されている。

"概観の目的で崑崙を次の三部に分ける。西部崑崙は東経七六度より八九度に至る。本質的には単純であるが、幅の廣い山脈らしい。中部崑崙はそれより約一〇四度まで延び、此の部分では主脈の北に多くの平行山脈が随伴し、そのため山系の幅が最大となる。東部崑崙は山脈の残部を占め、一一三度に於ける山脈断絶部に至る。此處でも平行山脈より成るが其の数は少い。更に東方延長をこれに附加し得る。それは一一三度より一一八度に達する低い山脈で、此の山系に属するらしいものとされるが、地質構造からはまだ證明されてゐない。"
(リヒトホーフェン42, p327-328, 望月勝海・佐藤晴生 訳。下線部については、原訳書では強調のテンが付されている。)

*追記2:  このWeb Siteで「西部崑崙山脈 (Western Kunlun Mountains)」とした山群については、さらに細分した資料もあるが、区分方法や細分した山脈の名称が資料によって大きく異なる(西部崑崙山脈の註を参照)ので、現時点では1つの山群にしておく(上記概念図には参考までに小山脈名も入れた)。[ 2010/1月 追記]

*追記3: M. Wardは、崑崙山脈を解説する際に次のように4分している(Ward91/92)。[2011/2月 追記]
*** ・West Kunlun (74゜E - 78゜E : Kungur Group, Mustagh Ata Groupを含む)
・Central Kunlun (77゜30'E - 82゜E)
・East Kunlun
Amne Machin Shan
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*2: 崑崙山脈の山については、日本では現在でも古い標高が使用されているのをよく目にする(例えば、国立天文台編「理科年表」の木孜塔格(ウルグ・ムズターグ)の標高は、最新版(2012年版)でも未だに旧来の値 (7723m) が使われ続けている)。(追記:2013年版になってようやく6973mが採用された(理科年表 平成25年(第86冊), p584)。)


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# バヤンカラ山脈  # Bayankala Mountains
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# アルカ山脈  # Arkatag Mountains
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# ウルグ・ムズターグ山脈  # Ulugh Muztag Mountains
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西部崑崙山脈 Western Kunlun Mountains
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