図書室
No.2
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安江多輔 編著 農文協、1993年刊 4200円 |
今では田んぼ一面のレンゲ畑を見る機会は少なくなってしまったが、私にとってはサクラよりもレンゲの方が春が来たことを感じさせてくれる花である。高校生の時には小さな鉢に黒いギョウザのような形をしたレンゲの種をまき、レンゲの花を鉢の中で咲かせようと試みたことがあった(結果はレンゲの花の時期が終わってからレンゲの芽が出たため失敗したが・・・)。 本書は、表題のとおりレンゲに関するさまざまな内容が盛り込まれている。このうちレンゲの本来の役割からみても農業面についての記述が多くを占めている。レンゲは冬を越さないと発芽しにくいとか、根粒菌のいない土地では生育しない(だから、海外でレンゲを栽培する場合、土に根粒菌を混ぜるという)等、園芸植物として栽培する場合でも役に立つ情報が記されていた。 これだけだったら本書は通常の農業あるいは園芸の本として終わっているのだが、最終章”レンゲの文化史”は別の意味で興味をひかれる内容だった。”文化史”と銘打っているため、レンゲについて書かれた詩歌、文学は当然としても、レンゲの名が付いた催し物までもが紹介されている(特に1988年春に行われた世界れんげ祭養老大会については、大会スケジュールや会場図まで紹介されており、春日八郎ショウや光戦隊マスクマンショウや石川秀美ショウといった催し物の開催時間や開催場所までわかるようになっている!)。 本書は表向きは専門的な内容を持つ地味な本であるが、読んでみると最後に思わぬ「拾いもの」をしたと感じられる本だった。
(99.4)
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